3月3日に国立競技場で行われた富士ゼロックススーパーカップではJリーグ王者の柏レイソルが天皇杯王者のFC東京を2-1で下し、初制覇を果たした。今回はその熱戦を振り返っていくと共に今シーズンのJ1の展望を述べていきたいと思う。

まずは、両チームのスタメンから見ていきたい。

・不変の柏レイソルと変化したFC東京

柏レイソルのフォーメーションは昨年同様の4-4-2。スターティングメンバーも昨年J1を制したメンバーが名を連ねた。一方のFC東京は昨シーズン、チームをJ2優勝&天皇杯制覇に導いた大熊清監督が勇退。新監督には大分トリニータ、FC町田ゼルビアを率いた経験を持つランコ・ポポヴィッチ氏が就任した。また、キャプテンを務めていた日本代表DF今野泰幸がガンバ大阪へ、鈴木達也が徳島ヴォルティス、坂田大輔がアビスパ福岡へと新天地を求めたが、太田宏介(清水エスパルス)、長谷川アーリアジャスール、渡邉千真(共に横浜F・マリノス)といった実力者の獲得に成功し、戦力を整えた。この試合では、今野の抜けた穴を昨シーズン、主に右サイドバックで出場した徳永が埋め、左サイドバックに新加入の太田を起用。同じく新加入の長谷川は1トップのルーカスの下で自由に動き回る役目を与えられた。

・したたかだった柏レイソル

この試合を通して目立ったのは柏の「したたかさ」だろう。前半の立ち上がりは細かくパスをつないでくるFC東京の前になかなかリズムを掴むことができず、自陣深くでボールを回される防戦一方の展開だった。

しかし、昨シーズンJ1を制した柏の選手たちは落ち着いていた。しっかりとコンパクトな守備ブロックを作り、ジッと嵐が過ぎ去るのを待つ。そして、嵐が過ぎ去り、太陽王のチームに光が見えたのは前半26分。一瞬のスキをついたジョルジ・ワグネルが左足を一閃。まさにゴラッソと呼ぶに相応しいミドルが決まり、柏が先制点を奪う。(ちなみにこのゴールはこの試合で柏レイソルが放った最初のシュートであった。)このゴールをきっかけにリズムを掴み始めた柏レイソルは前半の終了間際に追加点を奪うことに成功する。前半43分に北嶋が相手DF森重に倒され、ペナルティーキックをゲット。これをレアンドロ・ドミンゲスが落ち着いて決めて2-0とした。相手の時間帯には辛抱強く耐え、先制点を奪うことで試合展開を自分たちのペースに持っていくしたたかなサッカーは王者の風格を感じさせるものだった。ネルシーニョ監督の下、成熟が進んだチームは今シーズンも手強いと感じさせた見事な戦いぶりであった。

・勿体無かったFC東京

一方のFC東京は「勿体無い」試合となってしまった。立ち上がりから選手間の距離感が良く、しっかりとパスを回し攻めることができた上に、選手間の距離が近いため、連動したプレスでボールを奪えていた。また、椋原、太田の両サイドバックが高い位置を取ることで、相手を押し込むことに成功。その結果、前半20分くらいまではほとんど相手陣内でプレーをすることができていた。しかし、自分たちの時間帯に得点することができなかったことで、相手にリズムを掴まれることになってしまった。失点のシーンを振り返ってみても、1点目のシーンはジョルジ・ワグネルに対する詰めが甘く、2点目の森重がPKを献上したシーンは、ファウルなしでも充分対応できただろう。後半19分に1点を返した後は、何度も決定的なシーンを作っただけに、前半の戦いぶりは非常に勿体無かったと言える。しかし、J1王者のレイソル相手に一歩も引かない好勝負を演じたのは事実であり、渡邊、羽生といった交代出場した選手たちも自分の持ち味を随所に披露するなど、好材料も多かった。近年は昨シーズンの柏がJ1昇格1年目で優勝するなど 、昇格チームが好成績を収める例が多い。FC東京もこの例に洩れず、上位進出を果たしそうな予感がした試合であった。

・J1の展望

今シーズンのJリーグは発足して20年目を迎える。ちなみに筆者は今年で20歳となるため、人生をJリーグと共に歩んできたと言っても過言ではない。ここからはそんな筆者による今シーズンのJ1の展望を述べていきたい。

今シーズンのJ1は例年以上に予想が難しい。なぜなら、J1に所属する18クラブのうち、実に8クラブが新監督を招聘したからである。(下記参照)

鹿島アントラーズ:オズワルド・オリヴェイラ⇒ジョルジーニョ
浦和レッズ:堀孝史⇒ミハイロ・ペトロヴィッチ
FC東京:大熊清⇒ランコ・ポポヴィッチ
横浜F・マリノス:木村和司⇒樋口靖洋
ジュビロ磐田:柳下正明⇒森下仁志
ガンバ大阪:西野朗⇒ジョゼ・カルロス・セホーン
セレッソ大阪:レヴィー・クルピ⇒セルジオ・ソアレス
サンフレッチェ広島:ミハイロ・ペトロヴィッチ⇒森保一

当然、新監督を迎えたクラブは新監督が思い描くサッカーをいかに早く具現化できるかが鍵を握る。組織の構築に時間が掛かってしまえば、上位を目指すことは困難なミッションになってしまう。それだけに、ネルシーニョ監督が指揮を執る柏レイソルとドラガン・ストイコビッチ監督が指揮を執る名古屋グランパスは組織の構築に時間を取られることが無い分有利だろう。恐らく優勝争いはこの2チームを軸に展開されるはずだ。また、組織作りに手間取ることが無いという意味では、昨シーズン堅守を武器に躍進した手倉森誠監督率いるベガルタ仙台もこの争いに参戦することが予想される。鹿島アントラーズ、ガンバ大阪、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島といったクラブは前述したようにチーム作りが上手く行けば、優勝争いに絡んでくることは間違いない。

また、昨シーズンクラブ史上初の一桁順位(9位)でシーズンを終え、高木和道、伊野波雅彦、橋本英郎、野沢拓也、田代有三といった実力者を多数獲得したヴィッセル神戸、新監督にミハイロ・ペトロヴィッチ監督を迎え、残留争いに巻き込まれた昨シーズンの記憶を払拭したい浦和レッズ、柏レイソル相手に確かなチーム力を見せつけたFC東京が優勝争いに絡めるかどうかも非常に気になる点だ。

まもなく東日本大震災から1年が経とうとしている。2011年はサッカーの力を感じる場面が多かった。富士ゼロックススーパーカップの前に柏レイソルの大谷キャプテン、FC東京の梶山キャプテンが宣誓したように、昨年同様サッカーが多くの人々に夢や希望、感動を与えることを願いたい。

2011.3.3 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援している大学生。今シーズンはプレミアリーグを中心に観ていく予定です。当コラムに関する、感想、意見等がありましたら、下記のツイッターアカウントにどしどしお寄せ下さい。
ホームページ
ツイッター @villarreal442
Facebook
{module [170]}
{module [171]}

【厳選Qoly】なぜ?日本代表、2024年に一度も呼ばれなかった5名

ラッシュフォードの私服がやばい