サッカー界には様々なフォワードが存在する。
フィジカル自慢の怪力FW、一瞬の加速で相手を抜き去る快速FW、攻撃だけでなく、守備の面でも献身的にこなすFW、チャンスの割にゴールが少ないFW、簡単なシュートを外し、難しいシュートをいとも容易く決めるFWなど、例を挙げればキリがないが、「常にオフサイドぎりぎりで勝負するFW」と言えば、誰を思い浮かべるだろうか。恐らく、多くの人が思い浮かべるのはこの男しかいない。そう、ミランに所属する生粋のゴールハンター、フィリッポ・インザーギ(通称ピッポ)である
・「オフサイドポジションで生まれた男」
ピッポは相手DFとの駆け引きで勝負するタイプのFWだ。ピッポには圧倒的なフィジカルや抜群のスピード、敵を抜き去るドリブルといった武器はない。しかし、ゴール前での彼は相手DFにとっては極めて厄介な存在となる。それは、「抜群の嗅覚」が彼に備わっているからなのだ。(こぼれ球への反応の速さは世界でもトップクラスであり)また、常にDFラインの裏を積極的に狙う姿勢は多くのサッカー選手の憧れでもあり、ベガルタ仙台の柳沢敦、サンフレッチェ広島の佐藤寿人がインザーギに憧れていることを公言している。
最近は、トップの位置から下がって来て、組み立ての場面で貢献をしつつ、フィニッシュにも絡むタイプのFWが増えてきている(メッシ、ルーニー、トッティ、イブラヒモヴィッチ、ファン・ペルシーなど)が、ピッポは彼らとは正反対の位置にいる。周りを活かすプレーやドリブル、パスといった仕掛け、崩しの局面では、あまり期待させることは出来ないからだ。だが、それでも彼は超一流であり続けている。それは、とにもかくにも、ペナルティエリア内での彼の仕事ぶりやオフサイドトラップぎりぎりを抜け出す動きが天下一品だからだ。そして、それは、彼を讃えるコメントからも窺い知ることができる。
「オフサイドポジションで生まれた男」(アレックス・ファーガソン)
「彼はサッカーをまったくしていない。ただ常に的を射た場所にいるだけだ」(ヨハン・クライフ)
「彼がしている事の全てはゴールを決めることだ」(ゲルト・ミュラー)
・ミランでの現状は・・・
世界中のサッカーファン、関係者から称賛の言葉を浴びているピッポだが、所属するミランでの現状は決して良いものとは言えない。現在のピッポはFW陣の中において5~6番手。若き逸材エル・シャラウィ、今冬にカターニャから移籍してきたマキシ・ロペスの後塵を拝する形で、リーグ戦ではわずか6試合の出場(いずれも途中出場)に止まっている。
そして、更に深刻だったのがチャンピオンズリーグでの扱いだ。ミランの監督であるマッシミリアーノ・アッレグリは、登録メンバーから彼を外したのである。
確かに、38歳を迎え、肉体的な衰えが多少あるとは言えるだろう。だが、ゴールへの嗅覚は少しも錆びついておらず、まだまだ貴重な戦力として活躍できると筆者は考えており、ピッポを冷遇するアッレグリの考えは理解できないものだ。当然、豊富な経験を持つピッポを欲しがるクラブは多く、冬の移籍市場ではイタリア国内のシエナやプレミアリーグへの移籍が取り沙汰された。ミランへの忠誠を誓うピッポは今冬に愛するクラブを離れるという決断をしなかったが、ミランでの現状を考えれば、移籍を決断するのではないだろうか。
実際、今夏の退団を示唆したという情報があり、古巣であるアタランタやアメリカ、UAE、Jリーグのクラブに移籍するという噂もある。筆者としては、前述したようにまだまだ活躍できると考えているだけに、もう一度インザーギがピッチ上で躍動する姿を観てみたいと思う。そしてそれが、新天地候補に挙がっているJリーグであれば、最高だ。依然として世界屈指のストライカーであり、多くの選手の憧れであるインザーギの動向から目が離せない。
2012.4.8 ロッシ
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | ロッシ |
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プロフィール | 鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援している大学生。今シーズンはプレミアリーグを中心に観ていく予定です。当コラムに関する、感想、意見等がありましたら、下記のツイッターアカウントにどしどしお寄せ下さい。 |
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