個人的には最もしっくり来てしまう言葉である。

水色を愛する人には歓喜が、傍観者には劇的な、赤を愛する人たちには悲劇が、それぞれ訪れた。

試合前の条件は言うまでもない。

得失点差に大きな開きがあったため、シティは勝てば自力で優勝を決めることが出来る。

対するユナイテッド勝つにしてもシティの結果次第だ。

日本時間23時、泣いても笑ってもプレミア最終節が一斉にキックオフされた。

ユナイテッドは攻めあぐねながらも、前半20分にルーニーが頭であわせて先制に成功する。対するシティは決定機を量産するものの、決めきる事が出来ないまま前半が過ぎてゆく。

しかし、前半39分、サバレタがとうとうこじ開けて、先制に成功し、そしてこのまま両チームともにハーフタイムへ突入。

ここでお互いの情報は手に入っているはずで、ユナイテッドもシティもこのまま追加点を狙いつつ勝ち点3の確保を、ということが最低限の確認事項として上がったはずだ。

現実問題として、ユナイテッドは得失点差を埋めにいく話は出なかったように思われる。

それは先発メンバーからして、確実な勝ち点3を狙いにいったことが明らかであるからだ。

そして、残留争いも巻き込んだ、プレミア史上最も白熱した最終章が始まった。

ユナイテッドは追加点を狙いながらも押し込まれる展開が続き、追いつかれてもおかしくない状況ではあった。

対するシティは後半開始早々、レスコットのクリアミスからシセに叩き込まれて1-1。ボルトンとの残留争いの中で貴重な同点弾を得たQPRサポーターとラジオで情報を得ていたスタジアム・オブ・ライトのユナイテッドサポーター達は同じように歓喜を上げた。

まさかの失点に動揺するシティだったが、会場全体、いや視聴者も動揺させたのはやはりジョーイ・バートンであった。

後半10分、テベスへの肘打ちからレッドカードを提示され、その後アグエロをも蹴りあげてピッチを後にするという、残留がかかった試合で理解不能な行動を世間に披露した。

しかし、バートンの退場があるところまではいいように作用した。まずはシティ相手に失点しないことが前提となったQPRは、スイッチが入ったかのように、それまでの緩い守備から、チェルシーがバルセロナ相手に見せた、4-6-0に近い形で、自陣のスペースを消してゆく。

シセを下げながらも、高い位置を保ったシティの最終ラインの裏突いた格好で、後半21分に逆転のゴールをマッキーが頭で叩き込んだ。

再度歓喜するエティハドのQPRサポーターとスタジアム・オブ・ライトのユナイテッドサポーター、そして、顔を覆うシティサポーター。一人多い上に、戦力的に大きく上回るシティは、引き分けどころか、敗北する危機に直面することとなる。

ユナイテッドがリードしている以上、シティも同じ結果を残す必要がある。自爆に近い形でリーグタイトルを手放すあと一歩のところまできた。ジェコ投入で、サイドからのクロスに活路を見出そうとするも、人数をかけてなんとか凌いでいくQPR。

バロテッリを投入し、更に押しこむ時間が増えたシティであったが、ゴールが遠い優勝のためには2ゴール必要なまま、5分のアディッショナルタイムを迎える。

一方ユナイテッドは攻めあぐねながらも、1点を守り切るように後半を進めていった。アディッショナルタイムは1分。一度は手放した優勝を待ち受ける、スタジアム・オブ・ライトのユナイテッドサポーターはまだかまだかとソワソワしていた。

しかし、一瞬、ラジオを聞いていたユナイテッドサポーターの顔が曇った。91分、シティがCKからジェコのヘッドで同点に追いついたのである。残り4分、まだ時間はあると大逆転を期待するエティハド・スタジアム。先に試合を終えたユナイテッドとそのサポーターたちは、まさかが無いように祈るのみであった。

そして2分後、アグエロの楔のパスを受けたバロテッリが必死に角度を変えて落とし、QPRディフェンダー陣が必死にクリアを試みるもボールはアグエロの足元へ吸い込まれるように収まった。アグエロはそのまま右足を振りぬき、ボールはゴールへ・・・。

狂喜乱舞の解説、スタジアム、サポーター、ベンチ、ピッチ。一瞬にしてどん底に叩き落されたスタジアム・オブ・ライトの選手とサポーター。 ユナイテッドのサポーターたちは、優勝した時の祝杯を上げるシーン頭の中で思い描いていたに違いない。無論私もその一人だ。

「天国から地獄」

たかが5分、されど5分。ユナイテッドに微笑みかけたようなフットボールの女神は、シティに微笑んだ。

アディショナルタイムでの奇跡。直接対決ではないものの、私の頭の中には、いや、おそらく私だけではなく他の人もこう思った人は多少なりともいるだろう。

「カンプ・ノウの奇跡」

アディショナルタイムでの2ゴール、大逆転劇、相手は直接的でないものの、非常に酷似したこの状況。あの時のバイエルンのサポーターの気持ちが、少しだけ分かったような気がした。

会見でもサー・アレックス・ファーガソンは言っていた上に、前回のコラムでも触れたが、本来であれば勝ち点89は優勝するに値する数字である。もっともスペインの方では勝ち点91で優勝できなかったクラブがあったようだが、やはりシーズンとしては不成功とは言えないだろう。

しかし優勝とは相対的なもので、勝ち点がそれよりも1でも多ければ、同じでも得失点差が1でも多ければ決まるものである。

同じ勝ち点で同じ成績。しかし、優勝を逃したユナイテッド。勝利の女神が微笑まなかったのは、ホームでサポーターを喜ばせた回数がシティ少なかったからだろうか。

ツꀀ

シティがホームで18勝1分、ユナイテッドは15勝2分2敗。もちろん同じ勝ち点なのだからアウェーではユナイテッドのほうが多く勝っている。しかし、エヴァートン戦を含めて、「ホームでのミスがなければ・・・」と言えなくは無いだろう。シーズンを通して、勝ち点とは別に、勝負どころでの弱さというものを露呈したシーズンでもあった。この件に関しては別途に書く機会を設けたいと思う。

44年振り、だそうだ。祝福する気にはとてもなるまい。しかし現実、積み重ねたものはシティのほうが上だった。

結果は紛れも無い事実だ。強いものが勝つのではなく、勝ったものが強い。前回同様この言葉を戒めにしておく他無い。

余談ではあるが、私は嘘をついてしまった。

前回のコラムの最後に、結果に関わらずビールを飲む、と書いたが、さすがに試合終了後に喉を通す気分にはなれなかったからだ。

来シーズンこそは祝杯を。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 db7
プロフィール 親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
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