みなさん連日深夜の試合観戦で寝不足のことと推察するがどうだろうか。

私はというと、録画などを駆使しつつここまで全試合を観戦しているが、今大会はどうも盛り上がりに欠ける印象がある。その一つの要因として波乱の少なさであろう。

個人的に前回大会で最も盛り上がった瞬間はロシアVSオランダの試合であった。当時ダークホースとなっていたロシアが優勝候補に挙げられ、実際にも素晴らしい戦いをしていたオランダ相手に自分たちのサッカーを完璧に披露しジャイアントキリングを達成した、EURO史上に残る一戦だった。

このような波乱又はダークホースの出現が大会の盛り上がりには不可欠であると考える。そういった点からみると、今大会はやや面白みが薄い感はあるが、その中でも数少ない波乱を強いて挙げるならこの2つだ。

まず、1つ目はオランダの全敗でのグループリーグ敗退。この結果を予想できた人はなかなかいないだろう。しかし、敗退自体は死の組に入った時点で十分に予測できたことであり、初戦のデンマーク戦を見れば全敗も納得するほどのチームの出来であった。なにより守備が崩壊していた。これも選出メンバーの年齢などを見れば納得のいくことなのかもしれないが。

そして、2つ目はポジティブなものでギリシャの躍進である。大会前こそポゼッションサッカーをするという触込みだったが、蓋を開けてみれば、世界中を驚かした2004年を彷彿とさせる気持ちがいいほどのカウンターサッカーに原点回帰。なかなか痛快な戦いを見せてくれた。ただ、躍進といっても前述のロシアほどではなく、横一線のGLを逆転突破しただけと言われればそれまでか。

準々決勝敗退国を振りかえる

では、ここで直近に行われた準々決勝を敗れたチームを中心に見ていこう。

まずはポルトガルvsチェコ。大会前、ダークホースに推した私が言うのもなんだが、チェコはチームとしてあまりにも凡庸であった。守備面に関してはチェフを中心にそこそこよかったが、攻撃のほうは頼みの綱のロシツキーは怪我で出場できず、イラーチェクや今大会評価を上げたゲブレ・セラシエの突破に頼るのみであまりに魅力に欠けた。このようなチームが勝ち上がることを誰も望んではいなかっただろう。対するポルトガルのほうもとても魅力的とは言い難いサッカーをしていたが、彼らにはチェコと違いロナウド、ナニというタレントがいた。これが勝敗を分けたといっても過言ではないだろう。

次にドイツvsギリシャ。ギリシャはプラン通り、兎にも角にも守り続けカウンターを狙った。そして、この愚直なまでの戦い方は一度奏功する。0対1で迎えた後半10分、ギリシャの見事なカウンターが炸裂し試合を振り出しに戻したのだ。がしかし、6分後にケディラに浴びた弾丸ボレーがギリシャにとっては痛恨の失点であった。ドイツとしては実力差をしっかり出し、2010年旋風を起こした攻撃も見られ次に向け良い試合となった。

次にスペインvsフランス。はたしてフランスは何がしたかったのだろう。攻撃はちぐはぐでリベリのテクニックに頼るのみ。スペインの強さを感じるよりもフランスの弱さが見えてしまった。おそらく、試合としても退屈と感じてしまう人が大半だったのではないだろうか。思えばグループリーグ最後のスウェーデン戦からフランスのチームとしての完成度の低さは感じるべきことだったのかもしれない。

そして、最後にイタリアvsイングランド。守備が安定している両チームの対戦は大会屈指の好ゲームとなった。イングランドの豪華なメンバーによる守備的な戦い方を批判する人もいるかもしれないが、短い準備期間で臨むには最善の方法であっただろう。両チーム多くのチャンスがありながら結果としてスコアレスでPK戦に突入したということは、互いの実力を考えれば至極真っ当であった。PK戦は時の運であるが無論ピルロのクッキアイオが結果に影響を与えたことも間違いない。

セミファイナリストの現況は

最後にベスト4に残った4チームの現状を説明したい。

まずはポルトガル。毎回豪華な中盤を擁して大会に乗り込んでくるこの国はいつも守備が脆い。しかし今大会は例外のようだ。ペペという世界屈指のCBが円熟期で目覚ましいパフォーマンスを見せており守備を安定させている。そしてなによりこのチームはロナウドである。彼にいい形でボールを集めカウンターをヒットさせることが勝利への絶対条件であることは言うまでもない。しかし他の3チームに比べCFの質の低さは明らかであり王者スペイン撃破の一手をロナウド一人に託すのはあまりに酷である。ポスティガが負傷しスペイン戦で先発することが濃厚なH・アルメイダの下剋上に注目して見るのも面白いかもしれない。

スペインはここまで盤石の戦いぶりで、4試合で失点わずか1と死角なしだ。トレードマークのパス回しもバルセロナのそれに着々と近づいている。ただしバルセロナにはメッシがいてスペインにはいない。よってバイタルエリアで自由にボールを持てても有効なミドルシュートは放てず、ドリブル突破で違いを生み出すこともない。そもそもパス回しだけで得点を奪うということは相当の難儀でありドリブラーやミドルシューターがいるからこそより崩しやすくなるものである。もしかすると今大会のポルトガル相手にパス回しから得点を奪うのはなかなか厄介なミッションかもしれない。その状況を一変させるのがトーレスの先発起用だと筆者は信じているが。

次にドイツ。死の組を圧倒的強さで勝ち上がり格下ギリシャを粉砕し、スペインと並ぶ優勝候補の名に恥じない戦いぶりをここまでしている。4試合で9得点と大会トップの得点力を誇るが、問題はその攻撃陣の最前線、FWである。静のFWとして3得点を挙げているゴメス、動のFWとして1得点にとどまっているクローゼ。確かな決定力で活躍しているゴメスだが相手の守備のレベルが上がると活躍できないことが予想され、それに加え動かないので中盤以下の選手たちが弊害を受け、2010年ほどの活躍ができていないことも大きな問題となる。一方のクローゼが先発したギリシャ戦では格下相手ということを差し引いても流動性が生まれ攻撃陣が爆発したという事実がある。イタリア戦ではどちらが先発するのかまだわからないがゴメスなら相当厳しい戦いになるだろう。失点が初戦以降増えている守備陣の不安定さも気になるところである。

イタリアはカテナチオから脱却し攻撃サッカーを導入したはずだったのだが、大会が始まると不発の感が否めない。攻撃サッカーとは言ったもののピルロ、カッサーノのアイディア、バロテッリの身体能力におんぶに抱っこのようにしか見えない。確かにいつものイタリアに比べたら幾分ボールを保持するようになったが、選手のクオリティを考えれば当たり前である。攻撃がそんな調子であるにも関わらずベスト4に残っているのはやはりイタリアのカテナチオと呼ばれていた守備の復活だ。デロッシを中心とした守備陣の完成度の高さはもはや芸術の域である。まさに原点回帰で優勝を狙うのが賢明だと筆者は考える。

ちなみに、主観の入ったここからの予想は、クローゼが爆発しここ何年かの因縁の相手イタリア、スペインと打ち破り優勝をする・・・といった展開だ。

さてどうなるか。また、明日から楽しみな日が再開する。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

筆者名 平松 凌
プロフィール トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター @bayernista25
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