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昨日のなでしこの戦いに関して、佐々木監督の采配が賛否を呼んでいるようである。確かにスタジアムで観戦された方々には多少残念であったことは間違いないが、まず第一に言えることがそれを、つまりいくつかの選択肢を考えられる状況をようやく日本サッカーが手にしたのである。そこは素直に喜べるところであろう。
さて、本日25:00より行われるホンジュラス戦も種類は違えど似たような状況にある。
既にグループリーグ突破が決まっている日本はこの試合に引き分け以上で1位通過が決定。もし敗れれば2位となることはご存知の通り。一方のホンジュラス。スペイン戦はもともとそういう戦いがコンセプトだったのだろうが、開始直後に先制したこともあり、ほぼ90分間自陣での守備を強いられながら耐え抜いた。筆者個人的としては、グラスゴーでの日本のスペインへの勝利は決して奇跡ではないと思っている。それに対し、贔屓目抜きに考えてもホンジュラスの勝利は日本のそれに比べれば非常に泥臭く、GKの好セーブやクロスバー、ポストにも助けられた“奇跡”に近いものであったと思う。それでも旧宗主国であるスペインに対する勝利が彼らにとって我々が思う以上に意味を持ち、勇気付けられるものだったに違いない。そしてこの勝利により今日の試合で勝てば日本を抜いて1位で、引き分けなら2位でのグループ突破、敗れればスペイン対モロッコの動向次第で突破が決まる(モロッコは突破のためには勝利が絶対条件)。
既に敗退の決まったスペインがどういうモチベーションでモロッコと戦うのか、そしてその経過によっても変わってくるが、主要国際大会でまだグループリーグを突破した経験のないホンジュラスとしてはまず、引き分け以上で決勝トーナメント行きを確実に決めたいのが率直なところだ。日本としても1位になればベラルーシもしくはエジプトと当たる確率が高いが、もし2位となれば優勝候補筆頭ブラジルとの対戦が濃厚である(※日本の試合前には判明する)。「優勝を目指すのならどこで当たっても一緒じゃないのか」という声もあるかもしれない。しかし、なでしこもそうであるが、目標はあくまで金メダル、あるいはメダルの獲得である。そのために少しでも良い条件、少しでも負担の少ない相手と当たる可能性を探るのは至極当然である。仮にブラジルと準々決勝で対戦して勝利したとしても、その疲労度は間違いなく後に響く。逆に決勝での対戦ならば後先を考えずに戦うこともできる。
これらの条件から、日本、ホンジュラスのどちらにも言えるのが「絶対に負けられない戦い」だが、「絶対に勝たなくてもいい」試合でもあるのだ。引き分けで十分なのである。さらにいえば日本は出来るだけ主力を休ませて次へ進みたいのである(関塚監督がどのように考えてるかは分からないが)。それにはもちろんリスクが伴うわけだが「絶対に負けられない」ホンジュラスも、最後は荒れに荒れたスペイン戦でチームの攻守の要であるエスピノーサ、右サイドバックのアルノルド・ペラルタが警告を受け、日本戦は出場停止。否応なしに控えメンバーを起用せざるを得ない状況にある。さらに累積にリーチの選手が4人もいる。ホンジュラスとてブラジルとの対戦はメダルを目指す上では避けたいので勝利を求めたい。しかしあまり先ばかりを考えている余裕はなく、また、組織的な守備が基盤のこのチームが極端に無理をするとは考えにくい。仲の良いラテンの国同士ならこういう時、「空気を読む」ことが往々にしてある。ホンジュラスからすれば日本に対し「引き分けにしようよ~」と口には出さなくてもきっと思ってるに違いない。
その意味で試合内容以上に監督の采配、お互いの心理的な駆け引きから他会場の結果と見所は満載である。そしてそれは先発メンバーの発表から最初の判断を汲みとることができる。始めにも述べたが、日本がこのようなことを気にしながら試合を出来るということ自体がまさに成長の証と言えるだろう。
最後にホンジュラスの紹介をしておこう。チームの基本的な戦いに関しては前回モロッコ戦のプレビューに書いたのでこちらをお読みいただくとして、主力2人が出場停止ということだけでなく、モロッコに比べれば個人としてそれほど脅威を感じる必要はない。トップ下に入るマリオ・マルティネスのテクニックといやらしいキープ力、左足のキック、2010年に17歳でMLS新人王に輝いたアンディ・ナハルの突破、ウィガンでプレーするフィゲロアのフィードや強烈なロングシュートは注意が必要で、1トップに入りここまで3ゴールを記録しているベングソンの高さ、速さ、上手さにも十分警戒しなければならない。しかし、彼に対してはまず188cmの身長をシンプルに使ってくるロングボールにさえしっかり対処すれば危険は未然に防げるだろう。日本は今大会、序盤に非常に慎重な戦いを見せているため、開始直後はもしかするとホンジュラスがボールを支配する可能性はあるが、全体としてはホンジュラスのブロックを日本がいかに攻略するか、という展開になるのではないだろうか。
日本にはもちろん勝ってほしい。しかし勝たなくてもいい。ちょっとした新しい観戦スタイルの確立である。JAPAN PRIDE!
(筆:Qoly編集部 H)