CL第3節のドルトムントは、鋭いカウンターを武器にマドリーを脅威にさらし見事打ち破った。
その試合は実力的にチャレンジャーであるドルトムントはカウンターを主体に戦い、カウンターを武器にしているマドリーはアウェイという事情も相重なって相手チームと同じ戦い方を選択した。 しかし、スペインで行われるこの試合ではマドリーはポゼッション主体でドルトムントは後ろを固めつつ伝家の宝刀カウンターを抜くタイミングを伺う展開が予想された。
結果から言えばマドリーがホームで土壇場の底力を出し、追いついた2-2の引き分け。そこから何を思うかはそれぞれ人の立場や性格によって様々であろう。筆者はドルトムントのスカウティングから生まれた戦術を紹介していきたい。
まず、今回の第4節は、大きな驚きのないスタメンが発表されて試合は幕を開けたが、すぐに筆者が予想していた展開と若干違うことに気付かされた。モウリーニョが指揮するマドリーはポゼッションサッカーでじわじわと圧力をかけるのではなく、縦横に長いパスを使い素早くボールを動かしゴールに迫る選択をしてきたのだ。恐らくドルトムントのプレッシングに捕まることを嫌がり事前に指示してあったのであろう。それが奏功し試合開始直後からドルトムントのゴールに迫る。
だが、クロップも愛弟子たちに策を授けていた。それはドルトムント特有の一人一人の運動量による素早いプレッシングではなく後ろに大きな守備ブロックを形成し、それをスライドさせマドリーの攻撃に対応することであった。序盤こそマドリーが攻めたて支配しているように見えたが、ドルトムントは次第にマドリーのパス回しに慣れて対応できるようになった。
一方の攻撃は、ドルトムントがカウンターを効果的に使い、3節と同じように相手に脅威を与えたとも言えるが、ディテールを顧みると少しイメージはそのときのドルトムントとは異なる。高い位置でボールを「狩り」によって奪い長短のパスを織り交ぜゴールを陥れるのがドルトムントの常套戦術だと考えていたがこの日は違った。正確にはそのような攻撃ももちろんあったが攻撃の主なパターンは別にあった。それはCBコンビから前線に長いパスを入れてそれをチームの攻撃スイッチとしたことである。要するにそれは楔であり、どこのチームも行う一般的なものだが、ポゼッションしているときもカウンターで仕掛けるときもこれをスイッチとしているところが興味深い。また。レヴァンドフスキの懐の深さによって成せる業であり、対面するマドリーDF、ヴァラヌは最後まで後手に回っていた。そして、ドルトムントの得点は2つともこの形であり、レヴァンドフスキの能力を活かす形で、スプリント、スタミナ的にも優れた脚を持つロイスやグロスクロイツが飛び出して生まれたものであった。
その後、マドリーは前半イグアインの不調がブレーキとなり縦にボールも入らず攻めあぐんだが、後半カジェホンを入れ状況は一変。カジェホンの縦横の動きでボールが前にも収まるようになり、マドリーらしい縦へ速い仕掛けも見られるようになった。
ドルトムントはロイスを下げてベンダーを入れるなどして、やや守備に重きを置くものの、前半からの攻撃の仕方は変えず。スクランブル戦術によって異常に攻撃が強化されたマドリーの猛攻を浴び続け耐えに耐え、凌いだかに思えたが最後にエジルの直接FKで同点を許す。
多くの人は「守りきれなかった」と肩を落とすかもしれないが、失点は二つともセットプレーであり、「しかたがない」とも言える。プレミア王者ですら不可能であった、サンティアゴ・ベルナベウでの勝利はまだまだ“CL2年生”のクロップには難しい。
しかし前半の戦い方は見事であり、先輩モウリーニョに一泡吹かせたのではないだろうか。アウェイで貴重な勝ち点1を得たドルトムントのCLという過酷な海の航海はきっとまだまだ続く。
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | 平松 凌 |
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プロフィール | トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。 |
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