バイエルンvsドルトムント 「見えてきたドイツ版クラシコの終着点」
数年前までさして注目されるような対戦カードではなかったこの試合は、今や欧州の中でもトップクラスの試合と呼べるようなものとなっている。それは近年急激に力をつけ、CLでも確かな実力を見せつけているドルトムントと現在何かと話題を集めるバイエルンの対戦である。レヴァンドフスキの去就問題に揺れに揺れ、リーグでも勝ち点を効率よく積み重ねることができていないドルトムント、片やドルトムントにちょっかいをかけ続け揺らすに揺らしときながらチームはリーグ戦で圧倒的な安定感を見せているバイエルン。このポカールの準々決勝こそが事実上の決勝戦となるだろう。
実は今のドルトムントは対ポゼッション型のチーム相手に欧州屈指の相性の良さを持っていると筆者は考える。それゆえ、バイエルンはいくら好調とはいえ苦戦するであろうというのが予想。余談だが、現在のバルサ、またはペップ時代の最強バルセロナに対して、ミランやチェルシーのような戦い方をしないで勝つ可能性がある数少ないチームでもあるとも考える。
そしてフメルスとリベリという明らかな主力が欠場する残念なスタメン発表となり、それが少なからず影響した試合になったということも先に述べておこう。
試合の立ち上がり、バイエルンはいつものように後ろからしっかりビルドアップというよりは、フィード能力の高いダンチのロングボールを起点とした攻めが目立った。これはドルトムントをリスペクトして生まれた一つの答えと言える。欧州屈指の守備力を誇るバイエルンでさえ、ドルトムントのカウンターは恐れていたということだ(リベリの不在も影響したはずだが)。そして、徐々に時間が経ち膠着状態へと試合は進んでいく中で、バイエルンはボールを回すことは可能なものの、それが果たしてどのくらいの意味があったかは大いに疑問であり、得点もドルトムントの小さな守備の綻びから生まれた。もちろんロッベンのシュートの華麗さは特筆すべきものであったが。
後半に入り、さすがにドルトムントもまずは同点を目指し前に出てくるので、両チームのらしさが垣間見えるようになった。しかし、ここでも互いの牙城を崩すには至らず結局試合はこのまま終了しバイエルンが逃げ切るという結果に終わった。
このような結果は、「一つの終着点」のように筆者は感じた。互いに守備力が強力なうえに、それぞれカウンターやポゼッションから崩されることを警戒しているので、両チームともに得意な形からの攻撃がなかなかお目にかかれない。試合レポートをバイエルン目線で書いたのは筆者がバイエルン贔屓だからではなく、ドルトムントに決定的なチャンスがほとんどなかったからである。枠内シュートも片手で収まる数であっただろう。「レヴァンドフスキにボールを収め、そこからゲッツェorロイス」というレアル・マドリード相手にも通用した得意の形もレヴァンドフスキのとこで潰されて見ることができなかった。とにかく対人戦に強い、ダンチ、ファン・ブイテンのCBコンビに、レヴァンドフスキはCLでもなかなか感じ得ない圧力を感じたのではないだろうか。
今回の試合内容は少し前のあの試合に類似している。
そう、クラシコだ。今でこそ得点の多いスペクタクルな攻撃の応酬へとグレードアップしたが、少し前まではひたすらマドリーがバルセロナの良いとこを消していくディフェンスゲームのようにも見えた。バイエルン対ドルトムントのカードもお互いの良い部分を露骨に消すような守備はしていないが、近年の守備力強化によって前述と似たようなことが起きている。現在の傾向とも言える、守備>攻撃が覆ったとき、ドイツサッカーは更なる躍進をとげ、今カードは本家クラシコに負けずとも劣らない名試合になるはずだ。
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | 平松 凌 |
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プロフィール | トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。 |
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