4月6日に味の素スタジアムで行われたFC東京戦で、1-0の勝利を収めた大宮アルディージャ。この白星によって、昨シーズンの後半戦から続くリーグ戦の無敗記録が「16」となるなど、好調を維持している。この試合からも、アルディージャの粘り強い戦い方をうかがい知ることが出来た訳だが、今回の当コラムでは「大宮アルディージャが好調を維持する理由」を探っていきたい

・卓越したスロベニア人指揮官の手腕

現在のチームの好調ぶりを支えるのが、昨シーズン途中に就任したズデンコ・ベルデニック監督の卓越した手腕である。かつてジェフユナイテッド市原(現・千葉)、名古屋グランパス、ベガルタ仙台を率いた経験を持つこの知将が得意とするのは、「安定した守備組織の構築」で、攻撃サッカーを追求するロマンチストというよりも堅実なサッカーを好む現実主義者タイプの監督だ。

2013 Omiya Ardija

上図はFC東京戦でのスタメンである。ベルデニックの戦術は、オーソドックスな「4-4-2」をベースにした「シンプルなスタイル」であり、選手には”ハードワーク”が求められる。特に戦術的に目新しいモノはないが、攻守に手堅いサッカーでしたたかに勝ち点を稼いでいくのが特徴だ。

FC東京との一戦でも、DFラインの4人と中盤の4人がしっかりと「4-4」のブロックを形成し、テクニシャン揃いのFC東京のMFたちにさして自由を与えなかった。また、常にコンパクトな陣形を保つことで、ボールホルダーの選択肢を奪うことにも成功していた。更に、「攻撃から守備」、「守備から攻撃」といった切り替えも非常に素早く、FC東京のカウンターを未然に防ぐシーンが多々あったのも大変印象的だった。この守備力は、無敗記録が始まった2012年9月1日の浦和レッズ戦からこの日のFC東京戦まで、複数失点を喫したのは今シーズンの開幕戦である清水エスパルス戦のみ(2-2のドロー)というデータも納得の安定感である。堅実なセービングでチームを後方から支える守護神・北野貴之を中心としたDFラインだけでなく、チーム全体に守備意識の高さを植え付けた指揮官の功績も讃えられるべきだろう。

・多士済々のアタッカー陣

ここまでは守備面をメインに述べてきたが、攻撃面はどうだろうか。しっかりとした守備ブロックからの「堅守速攻」のイメージが強いアルディージャだが、攻守に貢献するダブルボランチの青木拓矢、金澤慎を中心にしたポゼッションからの多彩な崩しも大変魅力的だ。特に目立つのが厚みのあるサイドアタック。右サイドバックの渡部大輔、左サイドバックの下平匠が積極的にオーバーラップを仕掛けることで、相手DFの対応を困難なモノにしている。加えて、右サイドの渡邉大剛、左サイドのチョ・ヨンチョルの突破力も素晴らしいモノがあり、この迫力満点のサイドアタックに押し込まれてしまうチームは少なくない。

そして、何といっても現役のスロベニア代表であるズラタンとノヴァコヴィッチの2トップの破壊力が大変凄まじい。ともにオフェンス全般の能力に優れており、決定力もあるが、決してエゴイストという訳ではなく、周りを活かす術にも優れている。この2人のキープ力が前述したサイドアタックを十二分に機能させていると言っても過言ではない。また、スピーディーなドリブル突破とシュート技術の高さに定評のある大卒ルーキー・富山貴光、安定したポストプレーを誇り、終盤のパワープレーでも威力を発揮する長身FW・長谷川悠もサブに控えており、アタッカー陣の能力は総じて高いと言える。

・ACL出場も夢ではない

冒頭でも触れたように、アルディージャのリーグ戦における無敗記録は「16」に伸びた。J1の最高記録は2009年に17試合無敗を達成した鹿島アントラーズで、この年の鹿島アントラーズはリーグ優勝を飾り、3連覇を達成した。鹿島サポである筆者はこのシーズンをよく覚えているが、現在のアルディージャと当時のアントラーズを比較すると、したたかな戦い方が似通っているという印象だ。事実、FC東京戦では相手に押し込まれる時間帯が多かったものの、セットプレーからズラタンが決勝点をマークし、残り5分は「5バック」で相手の猛攻をしのぎ切った。豊富な戦力を抱えているわりには、なかなか白星に恵まれず、終盤戦に残留を決めるのが近年のアルディージャのパターンとなってしまっているが、この勢いが最後まで続けば、1桁順位はもちろん、ACL出場、そして優勝も十分にあり得るだろう。

まずは、アントラーズが樹立した無敗記録を更新できるかどうかに注目が集まりそうだが、アルディージャがどの順位でシーズンを終えるか楽しみにしつつ、これからの試合も観戦していきたいと思う。

2013/4/6 ロッシ


筆者名:ロッシ
プロフィール:エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
ツイッター:@antelerossi21

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