ここで完全に両手を挙げさせるか、僅かな希望を残させるか。8試合を残して15ポイント差のリーグのタイトルはほぼユナイテッドの手中にある。しかし昨期はそこからやられてしまった苦い記憶が存在する。

結果から振り返れば12ポイント差に縮まってしまったわけだが、それ以上にすっきりしないモヤモヤが残る敗戦は、ダービーという試合の持つ性質が少しばかり作用している気がしてならない。今回ばかりはマイク・ディーンによるとことは少ないのでなおさらだ。

序盤はオープンな展開であった。赤いクラブの本拠地には「勝って優勝決めようぜ」といった雰囲気が充満しており、画面越しにもスピーカー越しにも伝わってきた。アグエロを温存したシティは、オールド・トラフォードで最も嫌われているだろう“免停アルゼンチン人"を頭において、いつも通り中盤での数的優位を作りつつ崩す形を取った。前半20分あたりから徐々にシティペースで試合が進み、シルバが相変わらずいやらしい形でボールに絡む。しかしテベスの監視役となったジョーンズがキレのある動きで跳ね返し、スコアが動かないまま45分が過ぎていった。

もちろんこのまま終わるはずがないと思っていたが、それがどちらにとって良いドラマなのかは読めない戦況であったのは、私がユナイテッドを愛する者である前に、フットボールを愛する者だからだろうか。

後半、5分が過ぎたあたりでギグスが軽率なボールロスト、そこからミルナ―が鋭いミドルを叩きこんでシティが先制した。ユナイテッド、リーグでは久々の失点。しかし10分も経たないうちにユナイテッドはセットプレーから結果的にはコンパニのオウンゴールで追いつく。

余談だが、ミルナ―はゴールセレブレーション時に、300ヤードくらいかっ飛ばしそうなスイングを見せていたが、当時マージーサイドの赤い方にいたベラミーが、リーセと喧嘩してゴルフクラブでボッコボコにしたっていう“アレ"を思い出した人どれ程いるでしょうか。筆者は思い出してしまった。

話は戻って、1−1のタイに戻ったスコアとなったが、両チーム、ベンチからのスパイスが必要なことが明らかな状態であった。先に動いたのはシティ。冴えないフランス人の交通違反ドライバーを下げて、アグエロ投入。このマラドーナの元義理の息子にやられてしまう。

失点シーンを少し詳しく見ていくと、アグエロに星3つをあげなければならないようなゴールではあるのだが、ルーニーの動きに注目したい。それまで攻撃ではいまいちキレのない動きだったが、ヤヤの監視役として、シティのビルドアップにヤヤを効果的に参加させていなかったという点は見逃せない。過去数試合でヤヤにやられていることを考えれば当然の対応とも言える。しかし、アグエロ投入後はその役割がなくなったように見え、左寄りにポジションを変えている。アグエロへパスを出したのはヤヤであり、ヤヤに遅れながらアプローチに言ったのはキャリックだ。そしてアグエロはキャリックが出ていって空いたバイタルエリアに走りこみ、スピードに乗った状態でリオとジョーンズを交わしてニアをぶち抜いた。

試合はそのままいくつかの選手交代とイエローが数枚飛び交い、少々の揉め事を経て終わりを告げた。負けても残り7試合で12ポイント差、という状況からでないと思うのだが、どうもスッキリしない。正確には物足りないのだろう。復帰明けのルーニーがあの状態だったので、アタッキングサードでの迫力がなかったこともあるが、ベンチワークにも思うところがある。何も結果論から遡るのでなんでも言えてしまうのだが、アグエロ投入で勝負を付けに来たシティに対して、ユナイテッドは動かずにドローでいいような感じだった様な気がしてならないのだ。ドローに持ち込み、残り7試合を残して15ポイント差ならば、4月末のアーセナル戦を前にして優勝が決めることが出来る。そのためドロー狙いを批判するのではないが、いかんせん攻めて勝ちにいかななかったことが負けに繋がったように思えてならない。タラレバ故になんでもありだが、モヤモヤの元はこれにある。

もう一つ、言及するならばヤングだろう。基本的に左に構えるが、ほぼ右足一辺倒故に、高さと技量のあるシティのセンターバック相手には左からの上がる右足でのクロスは相手に余裕と時間を与えてしまう。そのため、クロスから危険な場面は多くはなかった。あの速さがあるのに、縦に抜けられないのは非常に大きな損失である気がしてならない。バレンシアもナニもキレの無いシーズンを送っているが、それ故にウェルベックの輝きは一層増して見える。チャンピオンズリーグでのマドリー戦あたりからだろうか、少々の大雑把さは残るものの、プレーの一つ一つが一皮向けた感じがしてならない。FW争いは嬉しい悲鳴と共に非常に熾烈であるが、それだけにウィングの不調がシーズン通して続くことが残念でならない。

このような感じで試合を振り返ったが、勝利の美酒に酔う機会を一つ逸してしまった。こればかりは何度あってもいいものなので非常に残念だが、4月中には優勝決めて頂いていい気分でゴールデンウィークを迎えたいので、自力優勝を決める為には、今月末にムッシュ・ヴェンゲルに泣いてもらう他無さそうだ。


筆者名:db7
プロフィール:親をも唖然とさせるManchester United狂いで川崎フロンターレも応援中。
ホームページ:http://blogs.yahoo.co.jp/db7crf430mu
ツイッター:@db7crsh01

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