では、横浜F・マリノスというクラブのどういう部分に魅力を感じるのだろうか?

「マリノスはチームがすごく熱い。2010年シーズンの終盤、マツ(松田直樹)が契約してもらえないって時に、ホーム最終戦を観戦していました。そこでサポーターも居残りをしていて、それにマツも『おれマジでサッカー好きなんすよ。マジでサッカーもっとやりたいっす!』っていうあの伝説的なスピーチがあって…」

黒澤さんが語るのは、すっかりお馴染みとなったこちらのスピーチである。

約15年間チームに所属し、リーダー的存在であった松田直樹はこのシーズン、チームから戦力外通告を受ける。

チームの非常な決断に、サポーターはホーム最終戦終了後、居残りをしてチームに抵抗した。そこで生まれた悲しくも感動的な一体感に、横浜F・マリノスというクラブのパッションを感じたのだという。

「自分は部活経験もなく、チームで熱くなったりする機会がなかったんです。サッカーは特に集団になって戦うスポーツ。そういう団結感みたいなものが自分の生活の中にはなかったので、『かっこいいな』、『男だな』と惹かれました」

松本怜という選手をきっかけに横浜F・マリノスにのめり込み、松田直樹の偉大さや比嘉祐介のおもしろさにも気付いていった黒澤さん。

チームから唯一日本代表に選ばれた齋藤学についてもW杯での期待を語ってくれた。

「齋藤学選手は今年ご結婚されましたし、支えるものがあってパフォーマンスも違うと思う。あと、東アジアカップでは代表チームに栗原勇蔵選手のような先輩が居たと思うんですけど、今回は齋藤選手がマリノスで唯一の選手じゃないですか。どんな力を見せてくれるのかすごく楽しみです」

しかし、W杯の舞台で齋藤学が躍動すればするほど、齋藤の去就も怪しくなるのも事実だ。そのことを尋ねると「そっか、それは困るな…」と吐露し、こう続けた。

「マリノスにはいてほしいと思います。けれど、中村俊輔選手みたいに一度海外に渡って、力をつけて帰ってきてもらうというプランもあるのかな。本人のステップアップになればいいと思うけど…それでもやっぱり最終的には帰ってきてほしい。それが一番嬉しいかな。ガンバ大阪の遠藤保仁選手のように、ずっといてくれるのも憧れますけどね(笑)」


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