かつて「サッカー不毛の地」と呼ばれた国で過去の失敗を受け、1996年に開幕したMLS。その当時からリーグ公式パートナーを務めているのがadidasで、ライバルであるNikeの地元でサッカーの発展を支えてきた。

その名がよく知られているのが「ジェネレーション・アディダス (Generation Adidas)」というリーグと共同の若手育成プログラムであり、ティム・ハワード、カルロス・ボカネグラ、クリント・デンプシー、ジョジー・アルティドールといった多くのアメリカ代表選手がそこから巣立っていった。

そして2000年代、まさにadidasの看板であったデイヴィッド・ベッカムがMLSのロサンゼルス・ギャラクシーへ入団。彼を迎え入れるにあたり、MLSは2007年に既存のサラリーキャップ外で各クラブが最大2名の選手を獲得することができる「特別指定選手制度 (Designated Player Rule)」を導入。

後にティエリ・アンリやロビー・キーンなどがこの制度を利用してMLSへやってきている。

ベッカムは2012年にLAギャラクシーを退団し、昨年2月には2007年にMLSと契約した際の契約条項の一つにあった、2500万ドルでチームを購入できる権利を行使。フロリダ州マイアミに新チームを設立したが、これはひとまず置いておき、ベッカム退団以降“顔”となるような選手がリーグにいないことにより、adidasのMLSにおけるプロモーションが多少やりにくくなったことは十分推測される。

また、ベッカム後を牽引してきたアンリが昨季限りでニューヨーク・レッドブルズを退団し(その後、引退を発表)、長く「リーグ最高の選手」の一人であったアメリカ代表のランドン・ドノヴァンも32歳の若さで現役を引退。

こうした流れの中でアメリカ行きを決断したのが、カカ、ビジャ、ランパード、そして今回のジェラードなのだ。

昨夏にもう一人、MLS行きが有力視されていたビッグネームがいたことも思い出してほしい。そう、バルセロナのチャビ・エルナンデスだ。

一度は退団を決意しながら、新たに就任したルイス・エンリケ監督やアンドニ・スビサレッタSDの説得により残留したチャビ。いまだニューヨーク・シティなどへの移籍の噂が絶えない34歳の元スペイン代表MFもまた、adidasの契約プレーヤーであるのは果たして偶然だろうか。

2010年に「8年間で2億ドル(約240億円)以上」という条件で2018年まで契約を更新した、MLSとadidas。昨今の移籍の動きについて特に公式のリリースが出されているわけではないが、昨年から薄々と感じていたことが今回のジェラード移籍である程度はっきりとしたことは間違いない。

彼らの“決断”はおそらく、「何か」による後押しを受けた結果なのである。

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