チームを磨き上げた自国人監督マフディ・アリ

2008年のAFC U-19選手権で指揮を執っていたのが、現在のA代表監督であるマフディ・アリ氏である。

かつてUAE代表選手として主に80年代終盤に活躍した経験を持ち、引退後にはアル・アハリのユースで指導者を務める傍ら大学を卒業し、エンジニアとしてドバイの地下鉄建設に関わったというエピソードがある異色の監督だ。

2003年にU-16代表のアシスタントコーチに就任し、その後U-19の監督に昇格。上記のAFC U-19で優勝したことによって指導者専業となり、2010年広州アジア大会で銀メダルを獲得、2012年ロンドン五輪に出場するという大きな結果を残した。

このように、明らかに「成功した」といえるキャリアを持つマフディ・アリであるが、それでもUAEで監督業をやるには非常に高いハードルが待っていた。

オイルマネーで潤うUAEでは、2部リーグの運営が弱くクラブチームの数が少ない上、オーナーを務める王族や実力者の力が強く趣味的な運営が為されることがしばしばだ。その結果、トップリーグのクラブでは有名な外国人監督が招聘され、UAE人監督の居場所はほとんどない。

それは代表監督でも同じである。

2000年からマフディ・アリ就任の2012年の間で言えば、11名が指揮官を務め、そのうち暫定でないUAE人はアブドゥラー・ミスフィル1人のみである。ちなみにそれ以前に遡ればさらに顕著で、1976年のジュマー・ガリブ氏以降の24年間で自国人の代表監督はゼロだった。

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