今シーズン限りでリヴァプール退団を発表しているMFスティーヴン・ジェラード。

先週末、チェルシーとのアウェイゲームに先発出場を果たした。

前節のQPR戦でゴールをあげていたジェラード。リヴァプールでのプレーは残り3試合であり、この日もキャプテンマークを巻きスタンフォード・ブリッジにピッチに立った。

さて、そんなジェラードにとってチェルシーという相手は特別な対戦チームである。

かつて、UEFAチャンピオンズリーグの決勝ラウンドで壮絶なバトルを繰り返し、幾多の名勝負を演じてきた。2005年夏にはチェルシー移籍も報じられ、ジェラード自身も移籍に前向きであったとを明かしている。さらに昨シーズンの第36節、優勝のためには勝利が必要だったチェルシー戦では自らの転倒により失点を献上し、結果的にタイトルを逃す形となった。

これがジェラードにとって最後のビッグマッチであり、その相手は奇しくもチェルシーであったのだ。さぞかし気合いが入っていたに違いない。

そんなジェラードに対しキックオフ直後、スタンフォード・ブリッジに訪れた観客たちは容赦ないチャントを浴びせる。

Steve Gerrard Gerrard
He slipped on his f*cking a*sse
He gave it to Demba Ba
Steve Gerrard Gerrard

(スティーヴ・ジェラード、ジェラード
 ヤツは転んでそのボールをデンバ・バに渡したんだ
 スティーヴ・ジェラード、ジェラード

こちらは、本来アンフィールドで歌われているジェラードのチャントの歌詞を替え、ジェラードを蔑んだ歌である。昨シーズンのチェルシー戦でスリップしデンバ・バにボールを渡してしまったことをライバルチームのサポーターが“ネタ”にしているのだ。

今シーズン、マンチェスター・ユナイテッド戦でも確認できたこのチャント。この日、チェルシーのサポーターたちはキックオフの直後にこのチャントを大声で歌い、アウェイの洗礼を浴びせた。

それだけではなかった。チェルシーのファンの中には、このようなプラカードを持った人たちが多くいたのだ。

この黄色いカードには"Caution Steven Gerrard"とある。要は、こちらも昨シーズンのことをネタにして、ジェラードをネタにして遊んでいるのだ。このあたりのユーモアはきわめて英国的であり、ジェラードにとってのチェルシーとのラストゲームはきわめて居心地の悪いものだったに違いない。

そんなチェルシーのサポーターを、ジェラードは結果で黙らせる。

44分、ジョーダン・ヘンダーソンのクロスを頭で合わせ、同点弾を記録したのだ。スタンフォード・ブリッジは静寂に包まれ、一時スタジアムにはリヴァプールファンからの“本物”のチャントが轟いた。これがプレミアリーグ通算119得点目となったジェラードは、マイケル・オーウェンを抜きクラブ単独2位の記録を樹立した。

【次ページ】世界中のレッズファンを震わせたジェラードの言葉