イタリア人指揮官は、戦術に対して深く傾倒する傾向がある。

世界中を見渡してみても、その細かな戦術への拘りは特殊なものだ。まるで、無数の哲学者を生み出してきた古代ギリシャの様に、イタリアの血脈は今も語り継がれている。世界最高の指揮官を争う男として常に名前が挙がる男、ジョゼ・モウリーニョの「セリエAは難しい。今はイタリア以外の国にいるからこそ、そう思っている。」というコメントも、イタリアに根付く戦術という文化を理解する助けになるかもしれない。

CLにおいてレアル・マドリードを率いていた(来季は、チームを離れる事が決定している。後任はラファエル・ベニテスが決まった)カルロ・アンチェロッティも、世界的に名が知られたイタリア人指揮官の1人だ。

イタリアで培われた細かな戦術への拘りだけでなく、群を抜く柔軟性を武器とする彼は、これまで様々なリーグに適応してきた。ギャレス・ベイルとハメス・ロドリゲスという強烈な個性を持つ新戦力をある程度チームに組み込むことに成功したのも、彼だからこそ出来る事だろう。バランサーとしての役割をこなしていたアルゼンチン人MFディ・マリアが抜けて、崩れてしまうかと思われた「チームバランスを寸前で保つ」絶妙の感覚は、「ペップ・グアルディオラやジョゼ・モウリーニョにも無い」彼の武器と言えるのではないか。

彼に対したのは、マキシミリアーノ・アッレグリ。イタリアの隠れた名指揮官ジョヴァンニ・ガレオーネが影響を与えた数人の指揮官の中でも最大の出世頭は、CLの舞台において特異な戦術眼を見事に発揮している。ACミラン時代にバルセロナを抑え込んだ手腕は、決してイタリア国内のみで埋もれるべきものではないと証明するかのように。

同じイタリア語を話す、同様の哲学者。カルロ・アンチェロッティとマキシミリアーノ・アッレグリは、攻撃的な面でも問題なくフットボールをこなすことが出来る現代的な指揮官だ。守備への拘りを持つだけでなく、彼らは柔軟に他の指揮官のメソッドを吸収する事で攻撃に生かす。

マキシミリアーノ・アッレグリは、ギリシャの哲学者ソクラテスが提唱した「対話法」の様に、ユベントスの戦術を高みへと導いた。アンチェロッティとの対話の中で、彼は柔軟にチームを導いたのだ。「対話」とは相互的なプロセスであり、高いレベルの指揮官とチームがぶつかり合ったからこそ、こういった試合を見ることが出来たのだろう。

今回は、戦術の限りを駆使してぶつかり合った世界最高レベルの戦いを紐解いていきたい。

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