「クロース封じ」への対応策
初戦でアッレグリが見せた1つのアイディアが、クロースの位置に2トップを当てることによって、レアルの攻撃において基準点となるドイツ人の司令塔を封じ込めることだった。そしてレアルが守備面での関連で、セルヒオ・ラモスを彼の相方として起用したことにより、その選択は良い方向に作用することになる。
本職はCBであるセルヒオ・ラモスが「DMFとしてのボール扱いに慣れていなかった」ことから、クロースへの2枚がかりの厳しいプレッシャーは彼の選択を狂わせていった。
レアルの豪華すぎる攻撃陣を操る影の主役へのプレッシャーは、モドリッチ不在もあって攻撃力を削ぎ落とすには十分だったのだろう。
それに対して、レアル・マドリードは3センターで対応。2人の選手をクロースの左右に配置する形を取る事で、組み立てを助けようとする。
また、執拗なサイドバックのオーバーラップも同様だ。中盤と変わらぬボールコントロールスキルを持ち、組み立てもこなすことが出来るマルセロの存在は、ボランチの負担を大きく軽減させる。
このように、左右のセンターハーフに配置された選手がボールを持ち運び、サイドバックが上がることが出来れば、比較的余裕を持ってボールを運ぶことが可能だ。ユベントスは実質的に4-4-2の様な形を取って守っているので、「サイドバック、ウイング、センターハーフ」の3枚が連携することで、瞬間的にサイドで数的有利を作り出すことが出来る。
この場面ではハメス・ロドリゲスがボールを持ち運んでおり、レアルが比較的プレッシャーの弱い状態でボールを運べている事が解るだろう。
これを助けたのが、非常に広範囲にポジションを取るベンゼマの存在だ。彼はロナウドが中央にポジションを移した際、細かくサイドに出ていくことによって相手のサイドバックを足止めするような役割を果たしていた。ハメス・ロドリゲス、マルセロ、ロナウドという3人を自由にするために、彼は巧みなポジショニングで彼らをサポートしていたのである。
これも似たような場面で、センターハーフがユベントスの中盤からプレッシャーを受けることなくボールを触ることに成功している。
サイドバックが組み立てに絡んでいくことになると、FWの1枚はある程度サイドバックを見る必要が出てくる。その典型例がこの場面。
4バックなのでサイドバック2人はゾーンを前に動かせず、代わりに2トップの1角が相手のサイドバックを見ている。しかし、2トップのマークは十分ではなく、クロースはパスコースを見つけられる状態だ。
この2つのパターンによって、前半レアルは主導権を握る。シンプルに外に枚数を増やし、そこで数的有利を作り出すことでボールを保有。その結果、クロースへのマークが薄くなるという訳だ。比較的シンプルな原理である。