ポルトの指揮官であるフレン・ロペテギは、多くの名選手を輩出することでも知られるスペインのユース代表で指揮を執っていた男だ。

原石のように粗削りな才能を集め、彼等を世界で戦えるレベルまで磨き上げるFCポルトは、育成を得意とする彼にとって理想的なチームだろう。勢いに乗るダークホース候補は、2014-2015シーズンのUEFAチャンピオンズリーグにおいてバイエルン戦まで無敗を保っていた。

ジョゼ・モウリーニョ、カルロ・アンチェロッティ、ユルゲン・クロップ。世界最高の戦術家として知られるペップ・グアルディオラは指揮官としてのキャリアの中で、多くの好敵手と向かい合って来た。

しかし、もしかしたら、フレン・ロペテギこそが「ペップ・グアルディオラを最も知る男」なのかもしれない。

旧知の友人とチャンピオンズリーグの決勝トーナメントで再会するというのは、まるで良く練られた演劇の脚本のようだ。スペインという地で指揮官として学んでいく中で、グアルディオラがFCバルセロナで体現したフットボールも、ビデオテープが擦り切れるほどに見たに違いない。

FCポルトが、ホームの地で王者バイエルンを葬り去った衝撃は大きなものだった。主力を欠いていたとはいえ、バイエルン・ミュンヘンはCLにおいて当然優秀候補に挙げられるチームの1つ。アウェイでの2ndレグが簡単なものではないことを考慮しても、3-1というスコアはポルトガルの希望を灯すには十分過ぎるものだった。

今回は、そのポルトの守備を崩壊に導いたペップ・グアルディオラの戦術について考察していきたい。

世界最高の指揮官によって散りばめられた様々な仕掛けは、まるで質の高い叙述トリックの様に、観戦者を惑わしてしまう。しかし、彼の戦術は緻密に「プロセス」としてデザインされたものだった。

その前に、まずは1stレグでバイエルンを苦しめたポルトのプレッシングについて見て行こう。

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