ペップ・グアルディオラのバイエルンが恐ろしかったのは、1つずつ丁寧に相手に枷を嵌めてしまったことだ。
高い位置を取ろうとするブラヒミの意識に裏からの攻撃を刷り込み、まずはそこから攻め込む。
更に、「ブラヒミが外で守る様に注意する」ことも織り込み済みだった。そうなれば、ミュラーで相手のサイドバックを内側に誘い込み、ラフィーニャとラームで攻め込んでしまえばいい。
守備が得意ではないウイングのブラヒミと、センターハーフで右サイドを守る状況を作り出してしまえば、バランスを崩す事は難しくない。
時にはチアゴ・アルカンタラも右サイドへとポジションを変え、バイエルンは何度となく右サイドを切り裂くようなパス回しで蹂躙した。センターハーフがサイドバックの位置を取ったラームやラフィーニャに思い切って飛び込めない事で、余裕のある状態でアーリークロスを送られてしまうような場面も散見された。
同時に、引く意識が強かったクアレスマの左サイドでは、チアゴ・アルカンタラが中央寄りから切り崩す形を多用。一度中に絞らせた上で、左サイドに開いてボールを受けるゲッツェを使うことで、右サイドよりもシンプルに縦を意識したサイド攻撃で相手を翻弄。左右で異なった攻撃を使い分けながら、レヴァンドフスキやミュラーを使ったシンプルな形でもポルトを苦しめた。
「相手に合わせた柔軟な対応」と「段階を分けて設定された相手守備を破壊するプロセス」。
前半45分での5得点は、決して偶然生み出されたものではなかったのである。
前線を牽引したトーマス・ミュラーは「攻撃のスタイルを前回とは変える必要があったので、そうしたつもりだ。前線で多くのスペースを生み出すことに成功したよ」とコメントしている。