やはり出てくる日本との関係
実は、去年にメールを受け取った時、Qolyで書こうと思って調べていました。相変わらずの遅筆でタイミングを逃してしまい、お蔵入りになっていたのです(苦笑)。
その時、この「ミクロネシア・ゲーム」の会場になったポンペイ島の中心都市、そして連邦自体の首都でもあるパリキールにある「在ミクロネシア国日本大使館」に問い合わせをして、同大会の概要を伺っていました。
そして、このメイン会場になった陸上競技場は「ポンペイ州ソケース地区生活習慣病予防普及計画」のために、2014年3月18日に日本政府から約12万米ドル(約1200万円)の無償資金供与を受けて作った多目的グラウンドでした。地域住民の肥満解消など健康環境改善という名目で作った施設を、地域最大のスポーツイベントの中核にしたわけです(サッカーはポンペイ島セントラルスクールのグラウンドで開催)。ちょっと分かりづらいですが、大使館のサイトの中にこの調印式の様子が残っていますし、ミクロネシア・ゲームスの開会式にも坂井眞樹大使とその夫人が招かれています。
在ミクロネシア日本国大使館
http://www.micronesia.emb-japan.go.jp/index_j.html
「ポンペイ州ソケース地区生活習慣病予防普及計画」の贈与契約署名式
http://www.micronesia.emb-japan.go.jp/nikokukan/2014/2014.3.18%20COM%20Atheletic%20Venue%20Sigining%20Ceremony/2014.3.18%20COM%20Atheletic%20Venue%20Signing%20Ceremony_j.html
「第8回マイクロゲーム開催」(2014年8月5日付)
http://www.micronesia.emb-japan.go.jp/itpr_ja/20140720micro_games_j.html
また、言うまでもなく、ミクロネシアは日本との関係が深い地域です。
第二次大戦まで約30年間、この地域は日本が統治していました。当時のポンペイ島の名称、「ポナペ島」には統治機関の南洋庁が支所を置き、チュークの旧名の「トラック」は日本海軍の重要な拠点になっていました。第二次大戦では米軍による侵攻作戦で多くの死者が出た島もありますが、今でも住民の対日感情は極めて良いとされますし、ミクロネシア国民の2割が日系という調査もあるようです。実際、ミクロネシア・ゲームス開催時の大統領は1979年に初代大統領となったトシオ・ナカヤマに続く2人目の日系人で4世のエマニュエル・マニー・モリでした。
とすれば、やはりサッカーの普及・強化でも、日本の支援が重要ではないでしょうか。
ミクロネシア連邦はパシフィック・ゲームス評議会の正式メンバーですが、OFCへの加盟は義務化されていません。今回の署名文中でも「AFCとOFCの双方に加盟を申請している」と書かれていて、請願先にはFIFAとともにAFCがあります。
また、グアムはFIFAとAFC、そして東アジアサッカー連盟(EAFF)の正式メンバーですし、北マリアナ連邦はFIFA未加盟ながら2008年にEAFFの正式メンバーになり、2009年にAFC準加盟を果たしました。
<表1>ミクロネシア・ゲームス参加地域の対外関係とサッカー国際組織への加盟状況
北マリアナ諸島はサイパンに日本の領事事務所が設置(グアムの総領事館の管轄下)。2006年にOFC準メンバーの状態でEAFF準メンバーになっていた。
パラオは2006年にOFCの準メンバーとなったが、2009年にEAFF参加を申請し、OFCとの関係は事実上消滅。
ナウルは日本大使館が無く、在フィジー大使館が業務を管轄。1973年に「ナウルアマチュアサッカー協会」が設立され、1990年代まで代表チームが活動していた模様。
ミクロネシア・ゲームスに参加したパラオもそうですが、OFC各協会の規模のバラバラさ、あるいはサエルアが別のインタビューで指摘した「OFCでは公式戦が(複数の大会を兼ねるので)4年に一度しかない」という地域事情を考えても、近隣地域が参加するEAFFを通じてAFC、そしてFIFAへの道筋を付ける方が、スムーズではないでしょうか。実際、北マリアナ諸島はOFCの準メンバーからEAFF参加を経てAFCの一員になりました。
日本側にもメリットはあります。ミクロネシアは日本政府による積極的な経済支援が続いているので、現地で何が必要かという情報はすぐに分かる状態です。既に北マリアナでは日本サッカー協会から指導者が派遣されているので、そのプログラムのアレンジで対応できるでしょう。日本との関係が深い協会が増えれば、FIFAやAFCでの活動もやりやすくなるはずです。
もちろん、今すぐにミクロネシア連邦がFIFAに加盟できるとは思いません。「実力不足」は世界中に知られてしまった状態です。これは、そのミクロネシアの3分の1にも負けたパラオでも同じでしょう。
ただ、グアムやアメリカ領サモアがそうだったように、数年間の適切なプログラムを組めれば、「世界最弱レベル」からの脱却は十分可能です。その実りを待てるだけの余裕は、今の日本サッカー協会なら持てるはずです。
では最後に改めて、「change.org」の署名先をご案内しましょう。
"Let Micronesia into FIFA"
https://www.change.org/p/f%C3%A9d%C3%A9ration-internationale-de-football-association-fifa-asian-football-confederation-allow-the-federated-states-of-micronesia-into-fifa
そして、次こそ、いろいろな「欲」のおかげで大混乱に落ちた新国立競技場問題について、改めて私なりの分析と展望を書きます。