エラス・ヴェローナ(1984-85)

イタリアで「ミラクル優勝」を成し遂げたのは、北部の街、ヴェローナを本拠地とするエラス・ヴェローナだ。

「ミラクル」といえば、「ミラクル・キエーヴォ」で有名な同じ街のキエーヴォ・ヴェローナを思い浮かべるファンも多いと思うが、本当のミラクルを達成したのはキエーヴォではなくエラスの方である。

エラス・ヴェローナは1984-85シーズンにたった一度だけの優勝を果たしているのだが、今と同じように決して強豪チームではなかった。

エラス・ヴェローナの過去の成績

1973-74 セリエA 13位 降格
1974-75 セリエB 3位 昇格
1975-76 セリエA 11位
1976-77 セリエA 9位
1977-78 セリエA 10位
1978-79 セリエA 16位 降格
1979-80 セリエB 13位
1980-81 セリエB 16位
1981-82 セリエB 1位 昇格
1982-83 セリエA 4位
1983-84 セリエA 6位
1984-85 セリエA 1位 優勝

ご覧頂ければわかるだろう。典型的な中位クラブであり、昇降格を繰り返してきたチームだ。優勝の3シーズン前までは2部であるセリエBで戦っており、この点は現在のレスター・シティによく似ている。

当時の指揮官はオスヴァルド・バニョーリ。選手としてはウィンガーであり、ミランでプロデビューしたが、現役時代はそれほど大きな実績を残せなかった。指導者となってからは、大きな実績もなく、チェゼーナをセリエA昇格に近づけたくらいであった。レスター・シティのクラウディオ・ラニエリが世界のクラブを渡り歩いた事を考えると、バニョーリが成し遂げたことはとてつもないことかもしれない。

「ミラクル・エラス」の主力はイタリア代表FWだったジュゼッペ・ガルデリシだ。11ゴールを奪い、チーム内得点王に輝いている。彼は現役の晩年、創生期のアメリカMLSに参戦しており、現在は指導者の道に進んでいる。

またガルデリシとコンビを組んで暴れたのは元デンマーク代表FWのプレーベン・エルケア・ラルセンだ。エルケアは1980年代のデンマーク代表の躍進に貢献した選手であり、後に「ダニッシュ・ダイナマイト」としてEURO優勝を果たした代表チームの礎といえる存在。Wikipediaによれば、1984年にエルケーアが加入するとファンはすぐに彼の虜になったという。また、優勝を決めた1985年5月12日にゴールを決めている。

そんなエラス・ヴェローナだが、優勝後は10位、4位、10位、11位と成績が安定しない。1989-90シーズンには16位でセリエBに降格しており、その後も典型的なエレベータークラブと化してしまった。キエーヴォ・ヴェローナの躍進の影で成績を落とし、2009-10シーズンは3部リーグを経験、と直近は苦しい状況が続いている。しかし、2013-14シーズンからは再びセリエAを舞台に戦っており、古豪としての存在感を発揮している。

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