『New York Times』は「スウィンドン・タウンに所属しているイラク代表MFヤセル・カシムが、自爆テロの現場を訪れていた」と報じた。

ヤセル・カシムはイラクの生まれであるが、父親のサファが国を脱出したために5歳で故郷を離れている。ヨルダンの警備兵を買収するなどして国外へ渡り、最終的にはイングランドへとたどり着いた。

トッテナム・ホットスパーのスカウトに見いだされたヤセルはその後ブライトン&ホーヴ・アルビオンでプロデビューし、ルートン・タウン、マックルズフィールド・タウンへのレンタルを経て、2013年にスウィンドン・タウンに加入。

イングランド3部リーグで活躍を見せ、現在はプレミアリーグのスウォンジー・シティからもオファーを受けるような存在となっている。

彼はイラクの孤児を支援する『Yes2Iraq』という慈善団体に参加しており、たびたび危険を顧みず政治的混乱に苦しむ母国を訪れている。

シカゴ大学の調査によれば、昨年イラクではおよそ200回もの自爆テロ事件が発生したという。セキュリティ上の理由から代表チームは2013年以降地元でプレーできず、イラクの人々は自分たちの英雄をその目で見ることもできない状況にある。

そして先月25日、バグダッドから南に数十kmの街イスカンダリーヤーでも悲劇的な自爆テロ事件が発生した。

地域のサッカー大会が行われていた現場で爆発が起こり、表彰式に出席していた選手、そして市長ら41人が犠牲になった。そのうち半数以上が10代の少年であったという。

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