EURO2016で初めて国際舞台を戦うアルバニア代表、これまでEURO予選を突破できなかったチームが本大会に進むとあって予選の終盤からは機動隊が出動するなどものものしい雰囲気の中、喜びの初出場を決めた。
しかし、今回のアルバニア代表は、アルバニア代表ではないのかも知れない。そんな疑問を抱いている人は少なくない。その理由を簡単に説明していこう。
フランスと同じ?
今回のアルバニア代表は、アルバニア生まれの選手が極端に少ない。
多くが、旧ユーゴスラビア出身のコソボ系選手、もう一つがスイスに住むアルバニア、コソボ系の選手である。どちらもコソボ紛争を逃れ、海外で生活していたところをアルバニアの市民権を獲得し、A代表に参加してきた選手たちである。
こうした経緯は、違いはあれどフランス出身の選手が少なく、アフリカ出身の選手が多く名前を連ねたフランス代表と重なるものがある。
スイスB代表
本大会ではスイス代表と戦うアルバニアだが、多くの選手はスイス代表出身である。
『Dailymail』は、昨年12月のグループ分けに際して、「本大会で最も混乱した組み合わせ」と評した。
アルバニア系、コソボ系の選手がスイス代表、アルバニア代表に二手にわかれているからだ。その主たる例が、ジャカ兄弟である。グラニットはスイス代表、タウラントはアルバニア代表をそれぞれ選択した。
スイス代表のヴァロン・ベーラミやパイティム・カザミはアルバニア系列の選手であり、アルバニアにはスイスのユース代表歴を持つ選手が多く顔を並べる。
これは、もはやスイス代表VSスイスB代表なのではないだろうか?そう勘違いするほど、スイスからアルバニアへ国籍を移した選手は多い。
コソボ代表の誕生がアルバニアを弱体化させる
逆に、アルバニア代表にとって今回が最初で最後のチャンスとなる可能性がある。それが、コソボ代表の存在である。
『BalkanInsight』はコソボ代表はアルバニアにとって「恐怖のインパクト」とこれを説明する。
その理由が、スイス代表と同じくしてコソボ系の選手がアルバニア代表入りを果たしているからだ。
これまで、UEFA、FIFAに未加盟だったコソボだが、UEFAが公式に加盟を認めた。2014年にGKのサミル・ウイカニがコソボ代表へ鞍替えを決めているが、今後も人材流出が止まらない可能性がある。
かつて横浜FCでもプレーした元アルバニア代表DFルディ・ヴァタは「2つの代表のネゴシエーションがアルバニア代表にとって極めて重要になる」と説明する。
今のところコソボ系のフレデリック・ヴェセリらはアルバニア代表を、アドナン・ヤヌザイはベルギー代表を選択したように大きな動きはない。
だが、若い選手はコソボ代表を選択するのではないかと考えられている。長期的な展望に立つと、一番被害をこうむるアルバニアは戦力ダウンを余儀なくされると見られている。