ポジションバランスとボールを失うエリアの設定。ナスリの運ぶドリブルによるリターンとリスクの計算。そこの攻守のバランスを突き詰めて行く上で、高いボールポゼッションはサンパオリのサッカーは必要不可欠なものである。

だからこそ、中央を管理するセンターラインのナスリとエンゾンジの替えは利かない。

あるチームがローテーションをすれば、ガタつくように機能不全に陥るのは見慣れた光景だ。トップパフォーマンスとのギャップをどれだけ埋めるかはチームの総合力を問われるものとなっている。

その試金石でもあり、課題を突き付けられたのがセビージャの現状だ。チームの要を担っているナスリが累積警告で欠場したアラベス戦と、CLレスター戦を控えていたためにナスリをはじめとする主力温存したレガネス戦で見えてきた問題点がある。

ボールを握るチームの宿命、つまり相手のプレッシングをどのように打破するか。ビルドアップの破壊、組織の破綻を狙う相手を如何にして往なすのか。

セビージャはこの2試合でより効果的なポゼッションの優位性を示すことが求められたが、結果は叶わなかったのである。

アラベス戦のセビージャは4-3-3で臨んだ(結果は1-1、※図の番号は背番号ではない)。

試合はアラベスが果敢にプレッシングしてペースが握れないセビージャという様相。

特に後半はフィジカルやプレーインテンシティの差が如実に表れた。4-3-3から3バックへシステム変更といった人海戦術で耐えようとしたサンパオリだが、中盤が枚数不足に加えて間延びによってボールを回収できずに陣地回復できない苦しい展開に陥る。

セビージャのビルドアップは完全に壊れており、割り切るように蹴り込むしか手立てが無かった。ロングボールで回収できる算段も付いていたが、それが間延びに拍車を掛けた見方もできる。セビージャでも間延びによるオーガナイズの破壊の修正は出来なかった。

それこそ時間を作れる選手の不在が響いた。ビルドアップの破壊に伴い、ナスリの不在は時間を生み出すことの重要性と前後分離といった組織的破綻を繕うファクターの有無を痛感させた。

ポゼッションが安定しないと攻撃時のコンパクトさは失われ、守備の準備が緩くなり、ネガティブトランジションにおいてはプレッシングも間延びによって効果的なものではなくなるという実例と言えるだろう。

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