日産スタジアムで行われた、J1リーグ第24節、横浜F・マリノス対FC東京。

FC東京の中島翔哉は80分からピッチに立ち、89分にはあらゆる者の予想を裏切るループシュートで湧かせた。

「結果」という観点では最高の旅立ちとはならなかったが、「期待」という観点では最後の最後まで感じさせてくれる選手であり続けた。

そして、次なる舞台は、ポルトガル一部リーグのポルティモネンセ。

果たして、彼に待ち構えるのは「成功」か「苦闘」か。

デビューすら飾れていない選手の行く末を占うことは極めて難しい。

だが、「彼のプレースタイル」、「ポルトガルリーグの事情」、「近年の移籍事例」を照らし合わすと、彼が辿るべき道は自ずと見えてくる。

誰もが圧倒する技術

中島というサッカープレーヤーは、とにもかくにも、ボールを扱う技術に長けた選手だ。

若くから彼を見てきた者にとっては、「何を今更」という感覚もあるだろうが、テクニックに関しては現日本代表の面子に勝るとも劣らない。

「こいつ、めっちゃ巧いな…」

オーストラリアでのアジアカップの際、かの清武弘嗣が舌を巻いたのは有名なエピソードである。

絶対的なスピードこそやや物足りないが、アジリティと繊細なボールタッチを駆使したドリブルは、数々のディフェンダーたちを泣かせてきた。

対峙した選手が足を出したくても出せない、絶妙なタイミングとリズムは、まさに独特の世界観。

危険なエリアに進入するということはもちろん、ファールを誘発するという効果も併せ持ったドリブルだ。

そして、そのドリブルと並び、彼の最大の特長がシュートだ。

素早い振り足でゴールキーパーの不意を突き、なおかつ、コースを正確に射抜くシュートは、相手チームを警戒させるクオリティーである。

それだけではなく、シュート意識自体も非常に高く、利き足を問わずに振り抜けるのだから、本当に恐ろしいタレントと言える。

もちろん、プレー全体の安定感や判断力の面など、不安要素が全くないわけではない。少なくともまだまだ不完全なプレーヤーだ。

だが、そのプレーには本当に驚かされる。

「一目でファンになった」と評する声がポルトガルで上がっても不思議ではないはずだ。