――では、早速、守備的MFの選考からお願いします。

ここのポジションの不出来はチームの順位に直結してくるので、やはり、リーグで上位だったクラブのボランチコンビは必然的に挙がってきますね。

具体的に言うと、大島僚太、エドゥアルド・ネット(川崎フロンターレ)、三竿健斗、レオ・シルバ(鹿島アントラーズ)、山口蛍、ソウザ(セレッソ大阪)、川辺駿、ムサエフ(ジュビロ磐田)でしょうか。

――その他に個々で見るとどうでしょう?

井手口陽介(ガンバ大阪)、三田啓貴(ベガルタ仙台)、大谷秀和(柏レイソル)、宮澤裕樹(北海道コンサドーレ札幌)、高橋義希(サガン鳥栖)などの印象は強く残っています。いずれも所属チームにおいてトップクラスの働きを見せたと思います。

ただ、ここから選ぶにしても絞り込むが少々難しいので…「チームへの貢献度」と「チームをその力でどこまで上昇させたか」に主眼を当てたいと思います。

――わかりました。その上で特に推したい選手は誰になりますか?

レオ・シルバ、ソウザ、大島の三人ですね。

レオは怪我の影響やターンオーバーもあり、先発で出場した試合は23試合に終わりましたが、不在の試合が多かった分、「彼がいる試合」と「彼がいない試合」の違いがはっきりと感じるシーズンになりました。

やはり、彼がいると、高い位置でボール奪取回数は変わってきますし、縦に入るパスの数も全く違います。文字通り、攻守両面で大きな影響を与えていました。

その存在感も含め、やはり、彼がいると中央からの崩しには誰もが苦労しますし、そこを避けて攻撃を選択するケースも多かったのではないでしょうか。

鹿島はサイドバックの組み立て能力が高いこともあり、サイドを起点とした攻撃が必然的に高くなるため、中央に位置する彼が決定機に顔を出す機会は少なかったですが、周囲に「働きやすい環境を与えていた」ということは間違いないでしょう。

続いてソウザです。これは「ソウザよりも山口蛍だろ」という意見はあると思います。山口は、Jリーグアウォーズのベストイレブンにも入っていましたし、実際にプレーも良かったですからね。前線がプレッシングをかけることによってこぼれてきたボールの回収やインターセプト成功数は特筆すべきものがありました。サイドバックが攻め上がって出来たスペースのカバーリングだったり、カウンターを未然に防ぐポジショニングだったりも秀逸でしたね。

ですが、「貢献度」で言うとソウザを推したいです。

理由は、その影響度が多岐に及んでいたためです。

具体例を挙げると、「攻から守への切り替え時における素早いボール奪取」、「ボールを奪ってからの持ち上がり」、「高い位置でのパスワーク」、「プレイスキック」、「セットプレー時におけるターゲット」、「ムード作り」などでしょうか。

さらに、前述の「ボール回収」も当然抜かりなくやるわけですから、まさに「八面六臂の活躍」という表現が相応しいシーズンだったと思います。

話が少し逸れますが、ルヴァンカップ決勝も本当に光っていました。川崎の息の根を止めたゴールを含め、個人的にはあの試合のMVPも彼だったと思います。

――なるほど。しかし、大島の名前は少し意外な気もしますが…

肉離れで離脱している時期がシーズン中に二回ありましたからね。ですが、あえて選びました。選考理由はレオのものと近いです。

――「いる時」と「いない時」の違いですか?

そうです。

最初の離脱は4月にあったのですが、彼が欠場した期間に行われた5試合での川崎の成績は「0勝3分2敗」でした。勝点に直せば、最大で「12」の損失です。

もちろん、この時期は他の主力も抜けていましたし、全てが大島の影響というわけではないでしょう。ですが、チームの攻撃のリズムは明らかに停滞していました。

川崎はビルドアップ時に、中村憲剛、阿部浩之、家長昭博らが中盤とDFラインの間に顔を出してボールを受け取る動きを頻繁に行うのですが、そこにスイッチ(縦パス)を入れるのが大島です。

密集地でDFラインやネットからパスを受け取ってもターン一つでかわす技術を持っていますし、常に視野を確保しているので、相手の急所を見事に突くタイミングでパスを出すんですよね。

パス数自体はネットなどのほうが多いと思いますが、「リズムを変えるパス」は、チーム内で抜きん出ていました。中村がラストパスだったり、最後の崩しの部分に顔を出す機会が多くなったのは、彼のゲームメイク力が成長したからではないでしょうか。

川崎のチームスタイルは、パス本数がリーグ1位、ボール支配率平均がリーグ2位という数字にも表れていますが、彼の存在なしには実現できなかったと思います。

プレミアリーグにおいて、守備時にはDFラインの前でインターセプト、攻撃時には起点としてパスワークを行う選手なんかを「ディープライングMF」と称することがありますが、大島なんかもどちらかというとそのタイプですね。

技術が高いのでもう少し自分で持ち上がったり、攻め上がってのシュートも挑戦して欲しいところですが、そこが身に付けば、日本代表はもちろん、海外でも活躍できると思います。

ただ、それよりも彼の場合は筋肉系のトラブルの防止ですかね。昔からこの手の怪我が多い選手で、それが原因でチャンスを失っている感があります。本人が一番悔しいとは思いますが…。

※このインタビューは12月7日に行われたものです。

――ということでベスト5は?

以下の順番にしました。

『Jリーグアウォーズ』で選ばれた井手口陽介と山口蛍がいないので炎上するかもしれませんが…。

1位:ソウザ(セレッソ大阪)
2位:レオ・シルバ(鹿島アントラーズ)
3位:大島僚太(川崎フロンターレ)
4位:川辺駿(ジュビロ磐田)
5位:大谷秀和(柏レイソル)