「背番号問題」を一つの契機に…

事の終結は今回のコラムを執筆する時点では不明だが、アンドレス・イニエスタというJリーグ史上最高級の超大物が、リーグ全体を揺るがしたことは事実だ。

また同時に日本のトップリーグは、間接的な形とは言え、サッカーファンに対して「我々は規定を変更する用意があるリーグである」という印象を与えてしまったことも明白である。

リーグ自体に柔軟性があることは一つの長所と評価できるかもしれないが、裏を返せば、まだまだリーグの規定や方針に「緩さ」が存在するということが証明されたわけだ。

この「緩さ」の捉え方も十人十色であるが、「Jリーグは自分たちが恩恵が感じられることに対して、特例として容認するリーグ」とレッテルを貼られても仕方がないだろう。

また、今後も類似する問題が発生する可能性は十二分にあり、それを毎度のように特例を認めるようでは、「規定は一体何のために存在するのか…」との疑念も抱かれかねない。

Jリーグには、今回の経験を契機にして「あくまでもレギュレーションの範囲の中で対応できる」よう、今一度、諸規定の精査をしてほしいものだ。

忘れてならない「ファンの思い」

とにもかくにも、リーグ、クラブ共々「イニエスタ祭り」に浮かれている印象だが、今回の騒動の中で、決してなおざりにしてはいけない大切なことがある。

それは「ファンの思い」である。

言わずもがな、三田啓貴を応援するサポーターはヴィッセル神戸を中心に数多く存在する。

そしてその大半が「背番号8・三田啓貴」のグッズを身銭をはたいて購入し、それらを身に着けて応援する者たちであり、その背番号に対しても「熱い思い」を持っている者たちだ。

「三田本人が背番号変更を了承したから問題ない」と言えば、それまでなのかもしれないが、自分が応援してきた選手の背番号を簡単に変えられてしまったことは、簡単に納得できることではないだろう。

広告塔という価値を含めてのネームバリュー、これまでの実績、選手としての能力においては、たしかにイニエスタが三田を凌駕しているかもしれない。

だが、それでも「ヴィッセル神戸の背番号8は三田啓貴」であり、サポーターの思いは数字などで比較できるものでもない。

「ユニフォーム販売後に背番号が変更された選手のグッズを無償交換」、または「背番号発表後に移籍した選手のユニフォームを返金」など、真摯にサポーター対応してきたクラブは海外にいくつもあるが、はたしてヴィッセル神戸はどのような立ち振る舞いを見せてくれるのだろうか…。

きっと、アンドレス・イニエスタという大きな存在は、様々な形で日本のサッカー界に財産を残してくれるはずだ。

そして、この聖人は、各方面に大きな課題を与えて周囲の成長を促す存在ともなり得るだろう。

このあまりにも強大な力とどのように向き合っていくか━━リーグとクラブに求められる責任は彼らが認識している以上かもしれない。

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