「メルカリで『ジーコサッカー』を買い漁っている知り合いの男性がいるんだけど」
知人からこんな連絡を受けたのは、3月某日のことだった。
読者の皆さんは『ジーコサッカー』をご存知だろうか。
今からおよそ30年前、Jリーグが開幕した当時は空前のサッカーブームで各社がこぞってサッカーゲームの開発に乗り出した。まだ『ウイニングイレブン』が発売される前の時代のこと。『プライムゴール』や『エキサイトステージ』などは筆者にとっても思い入れのあるゲームだ。
1994年3月4日にエレクトロニック・アーツ・ビクター(現エレクトロニック・アーツ)から発売されたスーパーファミコン用ソフト、『ジーコサッカー』もその中の一つだった。
このゲームの存在は筆者も当時から認識していた。ただプレイしたことはなく、それが『FIFA』シリーズを開発したEAから発売されていたことも全く知らなかった。
大多数のサッカーファンもおそらくはそれくらいの認識なのではないかと思う。
そんな『ジーコサッカー』を2022年の今、売り買いを繰り返している人物とは一体何者なのだろうか。なんだか面白そうだったので知人を介しこの謎の男性に話しを聞いてみることにした。
なぜジーコサッカーを買い漁っているのか
接触を試みると、男性は青森県在住だった。気さくで口調も柔らかく、1992年生まれの30歳だという個人情報までわざわざ教えてくれた。
「ジーコサッカー買ってますよ。ブックオフやリサイクルショップに108円で売っているので漁って買ってます」
近年はコロナ禍もあり、ゲームを配信することが浸透しつつある。そのなかで、現在のアラフォーやアラフィフたちがかつて熱狂した人気ゲームが“レトロ”というカテゴリとして若者たちに受けているそうだ。
ちなみに『ジーコサッカー』はサッカーとはいうものの、昨今のスポーツゲームと違い盤面で選手を指示して動かすというシミュレーションゲームに近いものである。
サッカーゲームとしての出来ははっきりいって微妙だ。
マウスがないと操作が難しいのだが、スーパーファミコンのマウスを持っている人は本当に少ない。また、24か国プラス鹿島アントラーズが使えるもののベンチメンバーがいなかったり、イエローカードやレッドカードの概念がなかったりで、評判は惨憺たるものだった。
ただこの男性は“売り買い”しているのだから、昨今のレトロゲームのブームに乗っているわけではないだろう。
話を進めていくと男性はサッカーに特に関心があるわけではなく、むしろ野球が好きで広島カープのファンなのだという。であればなぜそのようなことをしているのだろうか?
「改造ソフトを掘り当てたいんですよ」
ん?改造ソフト?全くピンときていない筆者をよそに青森在住の男性は話を続ける。
「ジーコサッカーの改造ソフトで『SM調教師瞳』っていうエッチなゲームがあるんですよ。2, 3年前にTwitterで“ジーコサッカーを買ったら中身がSM調教師瞳だった”というツイートを見たんです。なので私も探せば見つかるんじゃないかなと思い探し始めたのがきっかけです」
筆者にはまだ何がなんだか分からない。ただ一ついえるのは男性は『ジーコサッカー』そのものが目当てではなく、改造されたエロゲ―が欲しいということだった。