すでにワールドカップ本戦に出場することを決めているフランス代表は、29日に南アフリカとの親善試合を行い、5-0と圧勝した。

この試合で大きな話題の一つとなったのが、RCランスのDFジョナタン・クロス。

右のウイングバックで先発出場した彼は、29歳にして初めてのフランス代表招集という遅咲き選手。しかも2018年の段階でサッカーをやめかけていたという苦労人だ。

17歳でストラスブールのアカデミーから「痩せ過ぎている」として放出され、両親の離婚も重なって厳しい状況となったという。

プロサッカーに耐えられる自信を失ったため、スポーツ科学を学び、チラシ配りをしたり、精肉店でソーセージを詰めたり、郵便局で夜勤をしながらアマチュアでプレーした。

ジョナタン・クロス

「自分の足や頭には自信があったが、体にはまったくなかった。フィジカル的な衝撃が怖かった。でかい男たちが狂った速度で向かってくることが怖かった。その結果、臆病になる試合が多かったんだ」

また、彼はプロになることを考えていなかったこともあり、試合の前日にパーティをすることも多く、「遅刻野郎」というあだ名まで付けられたとも。

そのサッカーへの資質は高く評価されていたため、2013年にはホッフェンハイムへのトライアウトを手配されたものの、22歳という年齢を理由に獲得されることはなかった。

それからはフランスの下部リーグでプレーし、ラオン=エタップ、アヴランシュを渡り歩いたあと、2017年に24歳で初めてキュヴィイー=ルーアンとプロ契約を結んだ。

ただ、このシーズンにも苦難が訪れる。

チームは2部から3部へ降格してしまい、クロスはエラス・ヴェローナとディナモ・ブレストへの移籍話が実現せず、実家に戻って母親に「もうサッカーを辞める」と言ったという。