――昨年まではアルバイトをされていたと伺いました。大変な時期もあったのでは?

「一番大変だった時はバイトを3つ掛け持ちでやっていて、朝の6時から22時まで働いていました。あの頃は『年金や健康保険料を払わないと』と、考えることが多かったです。それでも毎日2、3時間は漫画を描く時間にあてていました。

僕の場合は小学館さんが発行している月刊漫画雑誌『ゲッサン2019年8月号』で、『もやもや』という作品が『第84回小学館新人コミック大賞』に入選してから可能性が拡がりました。賞という実績を作らないと出版社さんの企画に応募も出来ないという業界なんです。

それでも色んな出版社さんの企画に応募したり、持ち掛けたりする中でも上手くはいかなかったのですが、双葉社さんから面白い企画の提案がありました。

【他社さんに応募して不採用となった“お蔵入り作品”を掘り起こしましょう】といった内容で、それで採用されたのが、『ボクらの強化部』だったんです。

だからこそ、双葉社さん、アクションさんには本当に感謝しているんです。本来は他社さんで掲載してもらうために描いた作品だったんですから」

――これだけ苦労されていると、いくら好きなことでも嫌いになったりしないのですか?

「睡眠時間を削って描いていた時期でも嫌いになったことはないですね。漫画を描くだけで食べていけるようになった現在も、いろんな漫画を読んでいます。

ただ、色んな角度から作品を見てしまうので、『ここの線はもっとこうー、展開が違うな』とか、考えちゃうことが多くなって来ました。職業病ですかね?(笑)」

――サッカー漫画の執筆経験はあったのですか?

「読み切り作品では描いたことがありますが、連載となると求められるものが異なります。また、従来のサッカー漫画とは違った視点のものを出したいと考えました。そこで強化部やフロントを舞台にしました。

ただ、サッカーファンからしたら凄く興味をそそるお仕事でもあると思うのですが、外から見ているだけでは実際のお仕事ぶりが伝わって来ません。そこで実際のお仕事ぶりを取材することにしました。

実は最初に打診したクラブに断られたのですが、ダメもとで大好きなジュビロさんにお願いしました。すると、信じられないことにOKを頂きました。

もちろん、具体的な選手のエピソードはデリケートな部分や相手クラブの事情もあるので明かされませんでしたが、移籍成立の流れや移籍金の設定などの専門的なことから、選手とのコミュニケーションの取り方、一日のスケジュールなどをお伺いしました。

ですので、作品中の移籍の話などは僕の想像です。ジュビロとは較べないで下さいよ(笑)」