QolyコラムニストNobuya Akazawaが語る、7月第1週のJリーグの注目カードとその予想をお届けします。
鮮烈な優勝争いが繰り広げられる魔境J1。過去にこれほどまでに勝ち点の詰まっているシーズンはなかなかないと思います。魔境J1の王者に輝くために、優勝争いの渦中にいるチームがいます。それが昨季王者のヴィッセル神戸と新スタジアムのデビューシーズンを華々しいものにしたいサンフレッチェ広島です。
現在勝ち点37で4位のヴィッセル神戸と勝ち点34で7位のサンフレッチェ広島。首位を猛追していくために、負けられない戦いとなることでしょう。もしかすると、ここが優勝争いに生き残れるか否かの分水嶺かもしれません。
お互いに是が非でも勝ちを切望する一戦はJ1リーグ第22節の『金J』に選ばれました。では今回はこの2チームがどのような試合を繰り広げそうなのかを考えてみますので、ぜひ一読ください!
今回の内容は以下のようになります。
・試合の大枠
・広島目線から考える試合展開
↪︎大迫選手と中野選手の戦い
↪︎ハイプレスで閉じ込めれるか否か
↪︎SBを動かして取りたい背後
↪︎広島がピンチになる状況とは?
・神戸目線から考える試合展開
↪︎実は手にしつつある保持
↪︎ハイプレス?ミドルプレス?
・まとめ
トランジションを制する者は試合を制す
お互いのプレースタイルを照らし合わせたときに考えられる試合展開は「速さの応酬」となることでしょう。明確なターゲットマンに最優先でボールを送り込むヴィッセル神戸と執拗に背後を狙っていくサンフレッチェ広島。だからこそ、早い展開になることは間違いないと思っています。
そしてこれに付随して引き起こるのがトランジションの応酬です。この試合の勝敗を大きく左右するのは、きっとトランジションを制するか否かだと思います。
速さとトランジション。この試合の大枠というか、テーマになりそうな予感がします。
ではこの大枠を元に試合の詳細を考えていきます!
広島目線から考える展開
大迫選手 vs 中野選手の戦い
↪︎ヴィッセル神戸と対戦するチームがまず考えることとして、大迫選手をどのように抑えていくのか?は最初に浮上する論点なのではないでしょうか。4節の対戦では荒木選手が大迫選手とバトルを繰り広げながら互角に戦っていましたが、怪我の影響もあり22節はどうなるかは分かりません。そこで大迫選手と戦うのはきっと中野選手となります。荒木選手が不在の間、多くの手強いCFと戦ってきましたが、今回の相手はJ1で最も手強い相手と言っても過言ではありません。
しかし中野選手は、駆け引きをしながらその差を埋めて見事にサンフレッチェ広島の最終ラインを支えています。だからこそ、大迫選手とどのような駆け引きをしながら、どのように勝っていくのかは見どころの1つと言えるでしょう。
ハイプレスで閉じ込めれるか否か
『信念の下、俺たちは走り抜く。』
それを改めて示し、9連戦を6勝1敗2分の見事な成績で走り抜いた6月。束の間のオフで心身共にリフレッシュして挑む重要な一戦となるであろうヴィッセル神戸戦。サンフレッチェ広島は自分たちを信じ切ってこの試合もハイプレスで相手を敵陣に閉じ込めていくことを行なっていくでしょう。
そのプレスの方法は523もしくは343の形となります。この時にやはり重要となってくるのが、3バックのような形になるヴィッセル神戸の前進にどのように噛み合わせていくかです。
サンフレッチェ広島はサイドバック(以下SB)にはウイングバック(以下WB)、センターバック(以下CB)には3トップのうち2枚、インサイドハーフ(以下IH)にはセンターハーフ(以下CH)と明確なマーカーを設定していきます。特に追い込んだとき、プレスが嵌ると確信した時のプレスの迫力と回収率はJ随一と言ってもいいと思います。
しかし上記の図のように、神戸が3枚の形になった時にSBにWBが出ていくのか、セカンドトップ(以下ST)が出ていくのかは考えなければならないところでしょう。
実際に昨シーズンのアウェイ神戸戦。バックラインに残るSBに対してWBを押し出した先の背後のスペースをウイング(以下WG)に使われてしまい、佐々木選手、塩谷選手、荒木選手が広大なスペースで晒されてしまって敗戦を喫しています。この敗戦があるからこそ、SBに対して誰を押し出していくのかは重要なポイントになると考えています。
バックラインに残りながらプレーするSBに対して誰がどこまで出ていくのかは1つの注目ポイントです。
神戸の選手にプレーする時間を与えないほどの鬼気迫るプレスと、それを支える構造をしっかりと押し出すことがでたときに、ハイプレスで王者の喉元を抉ることができるのではないでしょうか。
SBを動かして取りたい背後
↪︎サンフレッチェ広島が取りたいのはやはりSBの背後のスペース。基本的に424のハイプレスと442のブロックを使い分けるヴィッセル神戸なので、WBのところでSBを引っ張り出していきたいのはサンフレッチェ広島です。
そのためにはやはり3CBで神戸のWGを呼び込む必要があります。さらにこれを作り出すために、神戸の1stプレスラインを横関係から縦関係にする必要があると考えます。
これをするためにCHのどちらかがDMFのような立ち振る舞いをする必要もあるかもしれません。これによってSTと列を上げるCHがIHのような立ち振る舞いをしながらWBの並行のサポートと、WBで引っ張り出したSBの背後を使える状況を作り出すことができるでしょう。
さらにCFと逆STへの上のパスの逃げ道を用意しつつ、それに付随する2ndボールの回収要員として、彼らが機能していくこともできると思います。
この形を作り出すことができるのならば、サンフレッチェ広島はヴィッセルを押し込むことができて「ずっと俺のターン」を作り出すことができるのではないでしょうか。
しかしSBの背後を消された時の保持の振る舞いはまだ拙いところが散見されるので、ここの向上も必須となりそうです。そしてそれを解決してくれそうなのが、若き才能の中島洋太朗選手となりそうです。彼が出場したのならば、彼のプレーに1人のフットボールファンとして、注目してみて欲しいです。
広島がピンチになる状況とは?
↪︎ではサンフレッチェ広島がピンチになりそうな状況を考えてみましょう。それはトランジション敗北と3CB脇の強襲です。特に先述したようなWBの背後を使われてしまうと佐々木選手、塩谷選手が晒されてしまいます。
広島と対戦するチームの多くはこの状況を作り出すことが多い印象です。1発での背後と大迫選手へ一度ぶつけといて、その2ndボールを回収して対角に進んでいく方法。だからこそ、中盤の勝負はかなり重要なポイントとなり、最初に触れたように大迫選手 vs 中野選手の戦いは流れを掴み切るか否かの分水嶺です。
そして今節戦うヴィッセル神戸には武藤選手と大迫選手、予想では広瀬選手が入ってきます。特に武藤選手のドリブル突破はやはり厄介で、佐々木選手がどのぐらい対応できるかも試合を分ける大きなポイントになりそうです。
神戸と戦うときに広島はこの形を幾度となく作り出されています。されどもサンフレッチェ広島は自分たちのやるべきこと信じ切って戦い抜くチームです。これが吉と出るか、凶と出るかは、試合が始まってのお楽しみの1つでしょう。
神戸目線から考える展開
実は手にしつつある保持
↪︎ヴィッセル神戸が実は手にしつつある保持の局面。「ハードワーク」を売りにして制した昨季。今季もそれをテーマに戦っているのですが、前節の鹿島戦で保持の局面も見せています。
(前節の神戸×鹿島の例を挙げさせてもらいます)
3枚の土台と4枚の土台を行き来する中で、大迫選手が列を下ろすことや、扇原選手がプレスラインの手前に降りることで、相手のプレス隊を引っ張り出すこと、全体のプレスの基準をズラしていくことを行なっていました。さらにこれを行なった場合の多くはWGが内側に入ってくることが少なく、幅を常に作り出しています。だからこそ鹿島戦の武藤選手の「一発回答ゴール」を生み出すことができるのできたのではないでしょうか。
そこでサンフレッチェ広島のプレスと照らし合わせたときに、この方法は刺さりそうだなと感じます。まず広島はプレスの基準をずらされることをあまり得意としていません。その象徴となったのが、20節の新潟戦と21節の川崎戦です。特に新潟戦は手前に降りたCHの対応に苦戦しました。だからこそDMFが1stプレスラインの手前にタイミングよく降りることができれば、ヴィッセル神戸は旋回をしながらライン間に立つ選手への下のパス、空間を作った中で大迫選手への上のパス、そして広島のプレスの足を止めることができれば、一発回答の背後で攻撃を仕掛けていくことができそうです。
そしてWGを強調していくことができると、自然とチャンスの回数は増えて勝利は近づくのではないでしょうか。
ハイプレス?ミドルプレス?
↪︎ハイプレスを仕掛けていくのか、ミドルプレスで少し構えてから出ていくのか。ここの部分は試合が始まってからすぐに見ていきたいところです。きっと立ち上がりはハイプレスを敢行するでしょう。しかし20分あたりからは、ミドルブロックでスペースを消すと予想します。なぜなら広島というチームがSBの背後を積極的に狙ってくるチームだからです。引っ張り出されて背後をつかわれてしまうとトランジションの局面でも不利になってしまいます。だからこそ、ある程度ボールを持たせていく中で試合のペースを落とすのではないでしょうか。そして外誘導をしながら、ボールを引っ掛けてカウンターへ!という構図を考えて試合を進めていくと予想します。
まとめ
今季ここまで最多得点を叩き出しているサンフレッチェ広島。しかしここまでの試合でゴールを奪えてない唯一の相手がヴィッセル神戸です。お互いに戦う土俵が似ているだけに、個人の勝負と試合に臨む詳細、そして積み上げてきたものをどのぐらい信じ抜いてプレーできるかが勝負「の分かれ目になるでしょう。
激しく、早く。この試合はきっとひと時も目を離すことのできない一戦になると思います!この試合もしっかりと楽しんで最高の週末にしましょう!!!
Nobuya Akazawa|J1全部見るマン|
サッカーの楽しさとスタジアムの良さを伝えたるために活動中。
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