「去年の経験があるからこそ」

一方の東京Vはその隙を見逃さなかった。MF翁長聖(ひじり)の勝ち越し弾以降、5-4-1の布陣で徹底的に守りを固め、柏に得意のカウンターをやらせなかった。なお、後半における相手のシュート数はわずか1本のみだった。

「相手に引き込まれた。リードされる展開が続いている中で、こじ開ける力強さがまだまだ足りない。相手の陣地でプレーしているからこそ、もう1個深く入っていくところだったり、ラストパスにおける数センチの差を突き詰める必要がある。相手がより強く守るからこそ、それ以上の力をつけなければいけない」と、ブロックを敷いた相手への攻略は今後のカギになりそうだ。

この一戦を今後の糧にしたい。戸嶋は引いた相手に対してチャンスを生み出したチームのコンビネーションに希望を見出す。

「いままでの経験を踏まえてみんなが慌てなかったことが、サイドだけではなく中央のコンビネーションをつくりだした要因だと思う。サイドからのクロスが厳しいのであれば中を使う。すると今度はサイドが空く。そのようなバリエーションや中央とサイドの使い分けをしていきたい。きょうのような形であればチャンスをつくりだせると思う。今回は全員で何かを合わせたわけではないので、再現性をもってやりたいです」と手ごたえを口にした。

J1はここから中断期間に入る。柏にとっては状況を好転させるチャンスにしたいはずだ。

「前回の中断期間にゼロで抑える意識を叩き込んでいたつもりですが、改めてゼロで終えることを重要課題としてやっていきたい。カウンターや奪いに行くときの守備など、簡単にやられないために突き詰める必要があるます」と背番号28は「ゼロ」を強調した。

井原正巳監督も同じ方向を向いている。「逆転を簡単に許してしまったことが問題。自分たちのゲームができた時間帯は多かったと思いますが、結果がついてきていない。また、3失点しているので、中断期間で守備のところを修正していかなければいけない。いい内容でも、やはり勝てないとチームの自信につながらない」と課題は守備面だ。

戸嶋は「このような現状に置かれているのは自分たちの責任。だからこそ、この先勝ち続けて状況を変えるのは自分たちしかいない。去年も苦しんだので、シビアな争いだということは全員が身に染みて理解している。でも去年の経験があるからこそ、自分たちの手で変えられるはずです。まずはゼロで試合を進めることで勝点も積み上がりますし、1点を取れば勝点3を奪えるかもしれない。それが下位にいる僕らなりの戦い方だと思う」と、柏の現状を語った。

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次節は14日午後7時にホームでジュビロ磐田と対戦する。降格圏の18位に沈む磐田との一戦は、J1残留に向けて是が非でも勝利したい。背番号28の言葉どおりに、柏は中断期間にゼロで終える意識を叩き込めるだろうか。

(取材・文 浅野凜太郎)

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