2025年11月22日、「天皇杯」こと全日本サッカー選手権大会決勝が開催された。かつて「正月の風物詩」として元日決戦が定番であったが、現在はリーグ終盤戦と併行して開催。今年は、前年度王者のヴィッセル神戸とJ1昇格二年目ながら快進撃を見せるFC町田ゼルビア。何かと共通点の多い両チームの対峙をヴィッセル神戸側から振り返る。
歴然だった勢いの差

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晴れやかな秋空のもとキックオフ。開始早々中山雄太が左サイドを突破してクロス、その混戦から藤尾翔太がゴールを決め、ゼルビアが先制する。
ヴィッセルにとってはまさかの展開。しかし、王者の矜持を持って落ち着いて対応…とはいかず、ゼルビアの綿密な「対策」に苦戦を強いられる。
そうこうしているうちに前半32分。ふわりと浮かしたミチェル・デュークのパスに抜け出した相馬勇紀が落ち着いてシュートしてゴール。あっという間に2-0とする。
その後も防戦一方のヴィッセル。特に右サイドを良いように蹂躙された。ヴィッセルにとっての右サイドは、かつてワールドカップメンバーにも名を連ねた酒井高徳と武藤嘉紀が預かるストロングポイント。Jリーグ連覇時は、初瀬亮を軸にした左サイドバックからの対角線フィードを受け、幾度も相手守備陣に襲い掛かりゴールシーンを演出した躍進の象徴だ。
しかしながら、この日はゼルビアの左サイドが完全に制圧した。相馬勇紀と中山雄太という東京五輪戦士に、2人を的確にサポートする林幸多郎の“内助の功”が、結果として2-0というスコアを生む。さらに他エリアでも随所でゼルビアの好プレーが光る。一方のヴィッセルは、よりによって天皇杯決勝という大舞台で、今シーズンワーストといっていい45分を過ごしてしまった。
