2025年11月22日、「天皇杯」こと全日本サッカー選手権大会決勝が開催された。かつて「正月の風物詩」として元日決戦が定番であったが、現在はリーグ終盤戦と併行して開催。今年は、前年度王者のヴィッセル神戸とJ1昇格二年目ながら快進撃を見せるFC町田ゼルビア。何かと共通点の多い両チームの対峙をヴィッセル神戸側から振り返る。

勝利を決定づけた「ファール」

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「王者」ともいえる存在であるにもかかわらず、ヴィッセル神戸サポーターは良くも悪くもおとなしい。筆者が言うのもなんだが、「ホンマに関西のクラブか?」と思うことは正直少なからずある。
しかしながら、この日に関しては、遠い東京の地でのあまりの不甲斐なさに所々で怒りを見せるサポーターが散見された(とはいえ、ブーイングがあったわけではない)。

後半開始とともに、鬱憤を打ち消す「救世主」がピッチに立つ。そう、大迫勇也だ。「ここからや!」と言わんばかりに、割れんばかりの声でチャントを奏でるヴィッセルだが、「半端ない」が続いたのは開始数分まで。

後半11分。中山と、筆者的にこの日出色の出来だった林とのコンビネーションからボールを受けた藤尾が、そのまま持ち上がって左足を一閃。前川の反応もむなしくスコアは3-0となってしまう。

勝敗は決した…誰もがそう思った中で、ここでヴィッセルがようやく反撃ののろしをあげる。「ムトサコ」こと、大迫勇也と武藤嘉紀のコンビネーションが攻撃の軸だった近年のヴィッセルにおいて、それに迫るであろう存在感を今シーズン見せた宮代大聖と佐々木大樹のコンビネーションで1点を返す。

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「ここからや!」と今度こそと盛り上がるヴィッセルだが、ここで試合を左右する「ビッグプレー」が生まれる。それは、左サイドでボールを受けた相馬勇紀が受けた何気ないファウル。やたら痛がる素振りを見せたことで、試合は一時中断する。

当然ながら?ヴィッセルゴール裏は大ブーイングだったが、ここで大きかったのはゼルビアの選手たちだ。アイスブレイクを強制的に設けられたことで落ち着きを取り戻し、残り時間を冷静にプレーした。

初タイトルがかかったゼルビアにとって、3-0というスコアは望外の展開だったはずだ。黒田監督にしても嬉しい誤算と推察できる。しかしながら、唯一隙を見せたのが1点を返された後半17分からの数分間。ここでヴィッセルが一気呵成に攻めたら、初タイトルの重圧から浮足立った可能性は残されていた。

そこで冷静な判断を見せたのが、チームの要である相馬勇紀。さすがは先のブラジル戦でも出場し、“国内組”ながら来年開催の北中米ワールドカップ日本代表メンバー選出候補にも挙げられる名手だ。この日は何度も左サイドを駆け上がったドリブルだけでなく、こうした何気ないプレーが実に“効いていた”。

一方のヴィッセルは、直後の佐々木、そして宮代の交代もあり、自らストロングポイントを放棄するかのような采配を見せる。最後の最後までウィークポイントとなったサイドに打開する力はもはや残っていなかった。

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