2025年11月22日、「天皇杯」こと全日本サッカー選手権大会決勝が開催された。かつて「正月の風物詩」として元日決戦が定番であったが、現在はリーグ終盤戦と併行して開催。今年は、前年度王者のヴィッセル神戸とJ1昇格二年目ながら快進撃を見せるFC町田ゼルビア。何かと共通点の多い両チームの対峙をヴィッセル神戸側から振り返る。

「失敗」といえば、このクラブは2023年にも似たようなことがあった。この年のヴィッセルといえば、クラブ史上初のリーグ優勝を決めたシーズン。未来永劫語り続けられる金字塔ともいえる一年だが、シーズン途中に、それまで中心選手に君臨したアンドレス・イニエスタが退団する一幕があった。

かつてFCバルセロナやスペイン代表で活躍した世界的名手は、2018年夏に“活動拠点”を日本へ移し、ノエビアスタジアム神戸で驚愕の妙技を何度も披露し観客を魅了した。彼とのプレーを希望する選手が国内外から集い、翌2019年に天皇杯優勝という実績も生み出した。2020年にはACLベスト4、2021年にはリーグ3位と着実に上積みを得ていたが、2022年の大不振を契機に志向するサッカーを大転換したチームは翌2023年から2年間、リーグの頂に立った。

画像6: (C)Getty Images

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一方で、それまでの“象徴”だったイニエスタや、同時にキーワードであった「バルサ化」という言葉に、失敗の烙印を押すものが現れた。ただし、イニエスタ以前のヴィッセルは、二度のJ2降格を喫するなど優勝なんて夢のまた夢。資金力自体は当時からあったが、J1参戦から2年でカップ戦を奪取したゼルビアと違い、金の使い方が“下手”であった。

それを踏まえると、実績とともにクラブの目線を一段階上げたアンドレス・イニエスタそしてバルサ化は、決して失敗だったとはいえない。そしてそれは2025年のヴィッセル神戸にもまた当てはまる。もちろんこれは、これまでの過程を踏まえた“暫定”の評価だ。来年以降の立ち回りで、それが覆ることも容易にありうる。

よくサッカーは「3年」が賞味期限とされる。分かりやすい例が「スペシャルワン」ことジョゼ・モウリーニョで、彼は3年目で悉く解任の憂き目にあっている。吉田孝行が監督に就任したのが2022年夏。そこからヴィッセルは一気に頂まで駆け上がり、志向するサッカーは新たなトレンドとなった。しかし、3年経った2025年現在、トレンドはスタンダードになり、選手の加齢も含めて、優位性を見出せなくなり、最終的に無冠でシーズンを終えようとしている。

マイナーチェンジかフルモデルチェンジかは分からない。しかしながら明確な変化をしないと、衰退の一途を辿ることは過去の歴史からも証明されているのがサッカーだ。ヴィッセルは今回、初めてトーナメント決勝で敗戦を経験した。そうした点も含めて、「『負けたことがある』というのがいつか大きな財産になる」と振り返る契機が訪れたといえよう。

(取材・執筆:向山純平)

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