2025年11月22日、「天皇杯」こと全日本サッカー選手権大会決勝が開催された。かつて「正月の風物詩」として元日決戦が定番であったが、現在はリーグ終盤戦と併行して開催。今年は、前年度王者のヴィッセル神戸とJ1昇格二年目ながら快進撃を見せるFC町田ゼルビア。何かと共通点の多い両チームの対峙をヴィッセル神戸側から振り返る。

「失敗」のシーズンだったのか?

画像: ヴィッセル神戸のタイトル獲得に貢献してきた吉田孝行監督。今季限りでの退団が決まった (C)Getty Images

ヴィッセル神戸のタイトル獲得に貢献してきた吉田孝行監督。今季限りでの退団が決まった

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試合は最終的に3-1でタイムアップ。FC町田ゼルビアが初のタイトルを獲得する結果となった。かつてヴィッセル神戸がそうだったように、最初のチャンスをしっかりと生かした。

ゼルビアにとっては、この成功体験をもとにさらなる躍進を目論むだろう。黒田体制を継続するならば、守備力と強度をベースにした負けないサッカーと短期決戦での“実績”は、今後もカップ戦で戴冠の機会を得る可能性は十二分に考えられる。左サイドの充実ぶりに対し、前線と右サイドの火力には聊か心許なさがあるが、そこは豊富な資金力を生かしたオフシーズンの立ち回り次第か。

一方のヴィッセルは、この結果を踏まえて2022年以来の無冠が確定した。ここ数年席巻した強度の高いサッカーは、既に数多くのクラブが“模倣”し、大迫勇也と武藤嘉紀を中心とした攻撃陣も、加齢による故障の多発で満足な稼働とならなかった。さらに、先のサイドバックから受ける対角線フィードからのサイド攻撃とクロス、アンカーを中心とした即時奪回からのカウンター、大迫あるいは佐々木のポストプレーからのこぼれ球…考えうる攻撃パターンに対し、徹底的な対策が施された。

それによる攻撃陣の停滞に対し、ギリギリのところで踏みとどまっていたのが守備陣の踏ん張り。しかしその防波堤も、「俺たちのサッカー」を愚直に敢行したゼルビア戦前半でとうとう決壊し、完膚なきまでに叩きのめされた。結果として今年の天皇杯は、組み合わせに恵まれたと言われても反論できない結末を迎えてしまった。

スカッドとしては、30代の主力選手を多く抱え、来シーズンは秋春制移行の兼ね合いで、夏までの半シーズンは特別大会となる特殊なレギュレーションを鑑みると、今オフは大幅な刷新も考えられる。

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応援する身ながら実に辛辣な言葉を並べてしまったが、しかしながら「2025年のヴィッセル神戸」が“失敗”のシーズンだったかというと疑問符を持つ。

確かに今シーズンのヴィッセルは、それまでの2年間と違い、主導権を得る試合が多くなかった。35節の新潟戦のように、既にJ2降格が決まった相手に対し、2点リードを守れずドローというこれまででは考えられない展開もあった。ちなみに昨年は、ルヴァンカップ準優勝を果たした相手に対し、1点ビハインドから最終的に、現在はゼルビアに所属する菊池流帆によるアディショナルタイムの劇的な逆転劇を生んだ。

しかしながら、それを踏まえて「失敗」だったかというとそうとは言い切れないとも思う。それは“前回”無冠だった2022年が良い例だ。

この年のヴィッセルは、前年の3位の勢いそのままにリーグ優勝を…と意気軒昂にシーズンを迎えるものの、故障者が続出して、開幕11戦未勝利という大スランプに陥った。

誰もが三度目のJ2降格を覚悟した中、どん底のチームを救ったのは現指揮官の吉田孝行。それまでのボールを大事するサッカーから、強度の高いダイレクトプレーを中心としたサッカーへと転換したチームは、一気に息を吹き返し、最終的には13位でフィニッシュ。今シーズンの横浜F・マリノスを彷彿とさせる大まくりを決めたのだ。しかしながら、所詮は13位である。しかも当時は、大迫勇也や武藤嘉紀などの主力選手が既に数多く在籍していた。それを踏まえると、最終順位が5位であったとしても失敗といえるのだろうか?

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