無冠の危機に瀕した「王者」

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ヴィッセル神戸は近年のJリーグを席巻している。リーグ戦は2023年と2024年に連覇し、2024年に関しては天皇杯と合わせた2冠を達成。名実ともに国内最強クラブのひとつだ。
しかしながら、2025年はこれまでの勢いに陰りを見せている。リーグ戦は36節時点で3位につけるも、勝点差で既に3連覇の可能性が消滅。さらにルヴァンカップでも準々決勝でJ2降格となった横浜FCに苦杯を舐めた。ACLに参戦中ではあるものの、残された国内タイトルは「天皇杯」のみ。
ヴィッセル神戸にとって天皇杯は、世界的名手アンドレス・イニエスタ在籍時の2019年に、クラブで初めて獲得したタイトル。さらに2024年は、同じ関西のライバルガンバ大阪に競り勝ち、リーグと合わせて2冠を達成した。元日決戦時も、現行フォーマットいずれにおいても相性がいいといえる。
連覇を目指すヴィッセルにとって、決勝までの過程は苦戦の連続だった。高知ユナイテッド(2回戦)、ヴァンフォーレ甲府(3回戦)、東洋大学(4回戦)、SC相模原(準々決勝)、サンフレッチェ広島(準決勝)と、準決勝を除けば「恵まれている」といって差し支えない対戦相手だ。唯一の“強敵”だったサンフレッチェ戦も、ゴラッソと“ラッキー”でモノにした「勝ちに不思議の勝ちあり」。
高校サッカー界の名将率いる新興勢力

青森山田高校の常勝時代を支え、現在は町田ゼルビアを率いる黒田剛氏
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決勝で対峙するのは、昨年のJ1初参戦以降、飛ぶ鳥を落とす勢いの「FC町田ゼルビア」。高校サッカーの名将黒田剛監督が率いるチームは、時に物議を醸すこともあるものの、“周到”でしたたかな一面を随所に見せる。資金力も豊富で、相馬勇紀や中山雄太など、“新参”では考えられないような大駒も擁する。初の決勝進出の勢いを持って、一気にタイトル奪取を狙うのは想像に難くない。
そして黒田監督といえば、かつて青森山田高校で「選手権」「インターハイ」「高円宮杯」優勝に導いた名伯楽。プロクラブでの指導経験こそ浅いものの、天皇杯のようなトーナメント戦の一発勝負には一日の長があるといえよう。
