初戦から苦戦。世界の基準に適応する難しさ

今回の日本は、グループリーグでパリ、トルコのボスポラスと対戦した。

初戦のパリ戦は1-1の引き分け。2戦目のボスポラス戦は5-3で勝利したが、内容は決して楽ではなかった。

「初参加の選手は、外国人のウォーミングアップを見て『動きが遅そうだから楽勝だろう』と思うんです。でも、やってみると強くて苦戦する。それが恒例なんです」

日本の選手たちが毎回苦労するのは、海外勢のフィジカルとコンタクトの強さだ。

「特徴的なのは、ボディコンタクトがものすごく激しいことです。ヨーロッパの基準だと思います。今回、体育会でやっていた選手もいるわけですが、彼らですら相手の体の強さには苦戦していました」

ボールの扱いだけなら、日本にも自信はある。だが、体をぶつけられながらプレーする、相手にぶつけながらボールを前進させる。その基準が違う。

小沼氏は、それを「ワールドカップの醍醐味」だとも言う。

「今回は南米系とは当たりませんでしたけど、ブラジルとかとやると、ずっとボールを握られてしまう。そういう体験ができるのが、非常に楽しい大会です」

準決勝と決勝は、2試合連続のPK戦

決勝トーナメント初戦、JAPAN UNITEDはフランスのマルセイユに5-1で勝利した。

「初めて楽な試合ができた」という一戦だった。

しかし、準決勝のインドネシア戦は一転して大接戦となる。

「インドネシアのサッカーはヨーロッパと違って、日本と似ているんです。ものすごく速くて、テクニックがあって、ちょこちょこ動く。体はそんなに強くないんですけど、かみ合ってしまう感じでした」

試合は0-0のままPK戦へ。日本は勝利したが、ポストに救われる場面もあり、逆に決定機を逃す場面もあった。

「本当に互角で、どっちが勝ってもおかしくない試合でした」

決勝の相手はルーマニア。こちらも0-0のままPK戦にもつれ込んだ。

「ルーマニアは非常にディフェンシブな戦いをしてくる相手でした。ピンチらしいピンチは一回だけ。こちらが押している場面は多かったんですが、非常に硬くて、なかなか決定機を作れなかった」

準決勝、決勝と2試合連続のPK戦。

その重圧の中で、日本は勝ち切った。

若手だけでは勝てなかった。優勝の理由は“総力戦”

今回のJAPAN UNITEDには、若くて優秀な選手がいた。経歴だけを見れば、彼らがチームの中心になるのは自然だった。

だが、小沼氏は「若手だけに頼って勝てるほど大会は甘くない」と考えていた。

実際、世界大会は甘くなかった。

前線には優秀なアタッカーがいた。それでも、その選手たちだけでは崩せない試合があった。拮抗した試合でゴールを決めたのは、40歳を超えた選手や30代後半の選手だった。

「本当にチーム全体が融合して戦えたことが、一番勝てた理由だと思います」

交代自由のレギュレーションも活用した。20人近い選手を連れて行き、選手を出し入れしながら、高い強度を保ち続けた。

「とにかく高い強度でやり続けようと。それを全員がやれたのが、一番の要因だと思っています」

日本らしさが出たのは、走力とアジリティだった。

「ヨーロッパの相手は、とにかく大きい。一見うまそうではないんだけど、体を当ててボールを収めるのがうまい。日本チームの強みは走力とアジリティ。とにかく動き切って、相手に優勢を取ろうと意識していました」

大柄な相手に、真正面から力でぶつかるのではない。動き続ける。強度を落とさない。総力戦で相手を上回る。

それが、JAPAN UNITEDの勝ち方だった。

「弁護士だから賢くサッカーをする」は本当か

弁護士のサッカーと聞くと、多くの人は知的なプレーを想像するかもしれない。

しかし小沼氏は、そこを冷静に否定する。

「よく『賢くやるんですか?』と言われます。でも、勉強で弁護士になる頭の使い方とサッカーは全く別だと思っています。頭で理解しても、ピッチで表現できるかは全く別の問題なので」

弁護士だから特別なサッカーをするわけではない。

ただし、この大会に出る選手たちは、例外なくサッカーが好きだ。普段から見て、考えて、プレーしている。そういう意味では、工夫しながら戦う選手が多いという。

小沼氏が難しさを感じたのは、むしろチームマネジメントだった。

若くて動ける選手もいれば、経験豊富なベテランもいる。サッカーキャリアも違えば、試合に出る時間にも差が出る。全員が海外まで来ている以上、当然、試合に出たい気持ちはある。

「試合に出たくても十分なプレー時間が確保できない選手もいた。その中でも、チームが優勝することを一番の目標として全員が協力することの重要性を共有していきました」

そのチームを支えたのが、A級ライセンスを持つ監督と、トレーニングや身体のメンテナンスを担った元プロサッカー選手の大友慧氏だった。

かつては、選手だけで大会参加をしており、サポートスタッフはいない状況だった。しかし世界の上位チームは、監督やトレーナーを帯同させ、プロチームのような体制で大会に臨んでいた。

「そこから変えないと、日本としても世界で戦えないと思っていました」

個人の力だけではなく、チームとして世界と戦う準備をする。

その積み重ねもまた、今回の優勝につながった。

日本の弁護士は、現地入りしたその日に試合をする

世界大会で戦う上で、日本チームには大きなハンディもある。

それは、コンディションだ。

「日本の弁護士は、ものすごく忙しい人が多いんです。今回の主力選手の中にも、試合当日の朝に現地に到着して、そのまま試合をした人がいました。帰りも、羽田に着いたらそのまま出勤します、という人たちがいる」

ヨーロッパのチームなら、前日入りで済む。移動距離も短い。

しかし日本からスペインへ向かうには、長時間の移動が必要になる。時差もある。しかも多くの選手は、仕事の合間を縫って参加している。

「コンディション調整という点では、ヨーロッパに比べると圧倒的に不利です」

小沼氏は、海外の弁護士と働き方の話をすることもあるという。

「イタリアの友人に、夜9時以降まで働いていたら『何のために生きているんだ』みたいな感じで言われます。日本の忙しい弁護士は、終電で帰れないのが当たり前という人も多い。平日にトレーニングするのは非常に難しいです」

それでも、彼らはサッカーをやめなかった。

土日に時間を作る。仕事の合間にトレーニングをする。忙しさの中で、工夫しながらサッカーを続けてきた。

だからこそ、この優勝には重みがある。

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