弁護士の大会だからこそ、日本サッカーの裾野が見える
今回の優勝を、小沼氏は「日本のサッカー文化の証明」と捉えている。
なぜなら、この大会はプロ選手の大会ではないからだ。
プロにならなかった人たち。別の職業を持ちながら、それでもサッカーを続けてきた人たち。その国の“サッカーの裾野”が問われる大会でもある。
「今回日本が優勝できたということは、日本の育成年代、弁護士になるような人たちのサッカーのレベルが上がったことを証明できた。裾野のレベルが上がったという意味で、すごく意義があったと思っています」
日本サッカーは、代表チームだけで成り立っているわけではない。
プロにならなかった人たち。仕事を持ちながらプレーを続ける人たち。地域でボールを蹴る人たち。
そうした無数のサッカー人生の積み重ねが、文化をつくっていく。
JAPAN UNITEDの優勝は、そのひとつの到達点でもある。
「日本代表よりも早く優勝したい」
小沼氏にとって、サッカーとは何か。
そう尋ねると、返ってきた答えはシンプルだった。
「生活の一部ですね」
小沼氏は、弁護士としてスポーツ法務にも携わり、選手の移籍やクラブ関連の仕事もしている。2023年にはFIFAのフットボールエージェント試験にも合格した。
見ることも、プレーすることも、仕事として関わることも含めて、サッカーは人生の中心にある。
そして今回、JAPAN UNITEDは世界一になった。
「僕らは勝手に、心の中で日本代表と競争しているつもりだったんです。日本代表よりも早く優勝したい、と。もちろん比べられる性質のものではないですけど、それができた。日本のサッカーが世界に通用することを証明したいという思いはあります」
ワールドカップ直前、日本サッカーは大きな期待を背負っている。
その少し前に、弁護士たちの日本代表が世界一になった。
それは、偶然のニュースではない。
日本サッカーの裾野が広がり、大人になっても本気でボールを蹴り続ける人たちがいて、その積み重ねが世界に届いたということだ。
次の世代へ、バトンを渡す
45歳の小沼氏は、本来であればクラシックカテゴリーに出る年齢ではない。
それでも、優勝するまではプレイヤーとしても関わり続けたいという思いがあった。
「先輩方がずっとチャレンジを続けてきて、私がこの大会に参加して、次にバトンを渡したいという思いでずっとやってきました。優勝して、次にバトンを渡したかったんです」
この優勝が、次の世代につながってほしい。
小沼氏はそう願っている。
「この記事を見て、『弁護士になって、そんなことができるんだ』と思う人がいてほしい。サッカーでプロにはなれなかったけれど、弁護士になって世界を相手にサッカーをしたいという人がいつか生まれてくれたら非常に嬉しいです」
サッカーは、プロになるためだけのものではない。
プロになれなかったとしても、競技をやめる必要はない。別の道に進んでも、仕事を持っても、家庭を持っても、世界を目指すことはできる。
ボールを蹴り続けていれば、人生のどこかで、思いもよらない場所へ連れて行ってくれることがある。
スペイン・ベニドルムで世界一になった弁護士たちは、そのことを証明した。
日本代表より少し早く、世界の頂点へ。
JAPAN UNITEDの優勝は、日本サッカーにとって“もうひとつのワールドカップ制覇”だった。

筆者:KEI IMAI
桐蔭横浜大学サッカー部時代に風間八宏氏(現川崎フロンターレ監督)にサッカーの本質を学ぶ。同時期にスエルテジュニオルスで育成年代のサッカーの指導に携わる。その後半年間、中南米をサッカーしながら旅をし帰国。現在都内で働きながらブログ「大人になってから学ぶサッカーの本質とは」を運営し、育成年代の現場の取材、指導者や現役選手にインタビューをしサッカーの本質を伝える活動をしております。
