パパの会社、かっこいい!

もう一つ、もっと明確なメリットを挙げた会社がいくつか有りました。その中では、やはり「日本発条株式会社」を紹介しましょう。一昨日のQolyで報じた通り、2020年度までの「ニッパツ三ツ沢球技場、命名権延長へ」に合意済ですし、それとは別に横浜F・マリノスと川崎フロンターレ(かつては川崎市内にも工場があり、富士通とも取引があったため)の看板スポンサーにもなっています。

≪ニッパツ三ツ沢球技場。スタジアム入口やホームゴール裏にも「NHKニッパツ」のロゴ(出典:同球技場公式サイト)≫

日本発条がここまで積極的な理由は、サプライヤーに対する信頼性が向上するという点もありましたが、社内での士気が明らかに上がったと説明されました。

「一般消費者に対して商品を売る会社と違って、私達の場合は『日本発条』と言っても良く分かってもらえない場合が多いです。特に自分の子どもが学校などで『お父さんはどんな所で働いているの?』という質問に答えられず、困った事もしばしばありました。ところが、三ツ沢の命名権を買ったら『パパの会社はそんなにすごいんだ!かっこいい!』と子ども達が言ってくれました。誰にでも分かってもらえますし、バックが怪しい企業なら行政とそういう話はできないですからね。その点での社員の士気向上は、お金には換えられない価値です」

そして、こうも付け加えました。

「なので、私達は命名権の更新を積極的に進めようと考え、2013年度から続く現在の契約も本当は3年間ではなく5年間を希望していました。ただ、他の施設で命名権取得企業のトラブルがあったので、横浜市が慎重になっていたようです。今回は2020年の東京五輪まで変えたくないというのもあり、当社の希望通りに5年契約の予定で進めています」

「単発のイベントにお金を出すより、こうして継続的なスポンサー活動を続ける方が、ずっと効果は高いと考えています。なので、私達はプロ野球本拠地の横浜スタジアムにも看板を出していますし、他の会社と違って『スタジアムの名称から地域名や都市名を外せ』とも言いません。私達は横浜の地元企業として、地域に根ざした活動をこれからも続けていきます」

日本発条は東証1部上場企業で、経営データを公表しています。2015年3月期決算では子会社を含む連結業績が6014億円、当期純利益が239億円。増収減益でしたが、2008年の最初の契約では年間8000万円とされた三ツ沢命名権の購入を行えるだけの余力はあります。このレポートで取り上げた他企業も、多くは数千億円、所によっては1兆円を超える売上を持っている巨大企業です。

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そんな大きな会社しか参加できないような状況になったのも、東京モーターショーの抱える問題の一つかもしれません。今回は160社が参加と発表されていますが、2年前の前回より18社減りました。マブチモーターも、前回は主催者による「SMART MOBILITY CITY」で工作イベントを開催しましたが、今回は見送っています。

なお、あの槇文彦が設計した幕張メッセのこけら落とし、1989年の第28回では349社、同会場だった1995年の第31回では最多の361社が参加していました。

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この規模でも、自動車部品製造などの「B to B」分野が事業の中心だと、なかなか企業認知度が上がらずに苦心しています。社員のモチベーションにも関わりますし、若者に対する採用活動ではもっと具体的な影響が出ます。それを補う価値を見出せるなら、最大でも年間数千万円というJクラブへのスポンサー支援はそれほど大きな負担ではありません。その意味で、一般向けよりもむしろ社内で大きな効果を得られたという回答は他の企業からも聞かれました。

もちろん、Jクラブにとってはその一社のおかげで外国人選手を取れる、練習場に温水シャワーを付けられる、選手寮の食事が一品増えるなどの、明らかにクラブ環境が変わる額です。「地域のシンボル」「幅広い交流の媒介役」という自分達の存在意義を訴えるのは、やはり各Jクラブ、あるいはリーグ全体にとって続けなければならないことでしょう。

・日本発条株式会社 公式サイト
http://www.nhkspg.co.jp/

・同サイト内展示会情報:「第44回東京モーターショー2015」に出展
http://www.nhkspg.co.jp/news/event/docs/2015/20151028/index.html

・ニッパツ三ツ沢球技場 公式サイト
http://www.nippatsu-mitsuzawa.com/

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