両親の母国イラクへ

オーストラリアから離れてからは、AFCアジアチャンピオンズリーグプレーオフのみの契約でフィリピン1部グローバルFCに入団した。その後は、両親の母国イラクへ渡った字羽井は、2018年2月にイラク1部アル・カーラバーに加入。日本出身者では初めてイラク1部でプレーした選手となった。そこで新型コロナウイルスの感染拡大の中断期間を含めて約5年間プレー。2022年7月には同国1部リーグ最多14度制覇の名門アル・ザウラーSCに移籍した。そして昨年9月に同1部ノールーズSCに加わり、現在もイラクでプレーしている。

――イラクに行った経緯を教えてください。

自分は大学で1回挫折したんです。身体的な理由で2年間まともにサッカーができなかった。手術を終えてから「すべてを犠牲にしてでもイラク代表になりたい」というのが最終的な目標です。

そのためだけに頑張ろうというときに、フィリピンのチームの契約が終わった後、フィンランドのチームに行く予定だったんですね。ただそれが直前でなくなってしまって、1回オーストラリアに3カ月間だけ戻るんですよ。

そのときお父さんに「イラクはどうだ?」と言われました。1回日本でも挑戦する話はあったんですけど、イラクでプレーしたほうがイラク代表に近付けるんじゃないかと。そこが経緯ですね。

――移籍する前にイラクに行ったことはありましたか。

自分が小学1年生かな?1年生のときに行ったことがあるくらいです。それ以降はないですね。

――イメージ先行で申し訳ないですが、イラクは「治安が悪い」イメージがあります。イラクに行く前のイメージはいかがでしたか。

自分のイメージもあまり良くはなかったです。お父さんが何回か行っていたので、そんなに最悪とは思ってなかったですけどね。

――実際に行ってみてイメージは変わりましたか。

めちゃめちゃ変わりました。ニュースは大袈裟というか、(イラクは)安全です。むしろ夜中の10、11時に、日本では考えられないですけど、5、6歳の子供が遊んでいる。

自分は昭和を生きたことないですけど、そんなイメージというか、近所の全員が友だちというか、町で全員知っているような感じでむしろ安全です。

だからイメージは180度変わりましたね。

――多分日本でのイラク像はかなり良くないと思うんですよね。その乖離は危ないと思って聞きました。

そうなんですよね。友だちには「やばいんじゃない?」と最初は言われていたんですけどね。自分もインスタ(Instagram)とかで配信したりしていて、いまでは「イラクが危ない」という人は誰もいないです。

結局どの国でも犯罪はあるじゃないですか。その犯罪がたまにクローズアップされるだけで街中はまったくですね。インフラも大丈夫なイメージです。