ユニフォームでクラブのエンブレムよりも目立つのが胸スポンサー。欧州のビッグクラブともなれば、このメインスポンサーとの契約で年間数十億円を稼ぎ出す。ところが、試合によっては“大人の事情”でそのスポンサー名が消えてしまうことがある。

日本で有名なのが、クラブワールドカップの前身、2004年まで開催されたトヨタカップであろう。1980年から中立地の日本で開催されるようになったこの大会は、冠スポンサーのトヨタ自動車に配慮したのか、長い間胸スポンサーなしのユニフォームで試合を行っていた。その流れが変わり始めたのが、1999年大会。マンチェスター・ユナイテッドとパルメイラスはそれぞれ、当時スポンサーであったシャープとパルマラットを胸に試合に臨んだ。それ以降はスポンサーが入ることが通例となったが、2001年のバイエルンは、業種的にトヨタのライバルにあたるオペルがスポンサーだったため、企業名が外れている。

UEFA CLにおいても時に面白い現象が見られる。今季はグループステージ第1節、それぞれマルセイユとチューリッヒに乗り込んだミランとレアル・マドリードが、胸スポンサーなしで試合を行った。これは、両クラブのスポンサーであるbwinが、フランスとスイスのオンラインカジノを対象とした広告規制に引っかかったためだ。今季から彼らと同様にオンラインカジノのBetClicと契約したフランスのリヨンに至っては、国内リーグすらも胸スポンサーなしの状態で戦っており、本来のユニフォーム姿が見ることができるのは、欧州カップのアウェーゲームのみとなっている。他にもセビージャの12betなど、近年強豪クラブのスポンサーとなっているオンラインカジノ。取り締まりが難しいこともあって欧州各国で規制に差があり、現状では上記2カ国のほかドイツなども広告を認めていない。

CL第2節、今度はルビン・カザン、CSKAモスクワというロシアのクラブの試合で、CLの公式スポンサーであるオランダのビール会社ハイネケンが、ロシアのビール広告規制の対象となったためピッチ脇の看板広告を出せず、代わりに『NO TO RACISM』という人種差別反対のスローガンを掲示した。近年ロシアでは過剰な飲酒による健康被害が深刻化。ソ連崩壊後に市場を拡大させたビールに対しては現在、販売規制なども検討されているようだ。また、続く第3節では、試合前日に昨年からの金融不安のあおりを受けDSB銀行が破綻したため、アーセナルをホームに迎えたエールディヴィジ王者AZの胸から「DSB」の3文字が跡形もなく消えていた。後半ロスタイムに決まったメンデスの劇的な同点弾が、新たなスポンサーの獲得に繋がることを祈りたい。

一方で、突然胸スポンサーが出現するクラブもある。昨年12月6日に行われたセリエA、ラツィオ対インテルの試合では、日本で有名なウイニングイレブンの欧米向けソフト、PES2009がラツィオの1試合限定スポンサーとなった。ラツィオはここ数年胸スポンサーがないため、こうした契約が可能だったのであろう。セリエAのリーグ戦でTVゲームソフトがスポンサーを務めたのは、これが初めてとのこと。ラツィオは今年8月8日に北京で開催されたイタリア・スーパーカップでも、本拠を置くラツィオ州と契約。コロッセオをバックにした『ローマは、あなたを待っている』という中国語の観光広告を入れて試合に臨み、リーグ4連覇中のインテルを相手に金星を上げた。現在セリエAで低迷するチームにとって必要なものは、やはりスポンサー(補強資金)、ということなのかもしれない。