カターニャvsユヴェントス 「ユヴェントスの散見された脆さとカターニャの見せた可能性」

カターニャ対ユヴェントス、この試合は若き2人の戦術家の争いだったと言ってもいい。42歳のアントニオ・コンテと37歳のヴィンチェンツォ・モンテッラのぶつかり合いは非常に面白いものだった。2000年の欧州選手権では、チームメイトだった2人が互いに監督としてチームを率いる姿には、時代の変化を感じさせられたファンの方々も多かったのではないだろうか。その辺りの時期に、イタリアのフットボールに興味を持ち始めた筆者もそんな一人である。

試合は、マルコ・モッタの退場をきっかけに崩れたカターニャが、ユヴェントスの猛攻に晒され、さらにGKのミスも重なって3‐1で黒星を喫する結果に終わったが、今回のコラムでは、敗者側であるカターニャに注目して見てみたいと思う。

小型飛行機と呼ばれたヴィンチェンツォ・モンテッラが率いたカターニャは如何にしてユヴェントスという空を飛び回ろうとしたのだろうか。まずは、次の図を見ていただこう。

ユヴェントスが敷く3‐5‐2のフォーメーションにおいて、カターニャが狙ったのはピルロである。確かに圧倒的なパスセンスを持つイタリア最高峰のレジスタであるピルロは、ユヴェントスの核ではあるがどうしてもフィジカルや守備面では劣る。そのピルロの両脇にバリエントス、ゴメスの2人をカターニャは送り込んでいった。そして、そこにボールが入ると、彼らはピルロをかわしながらシンプルにミドルシュートを撃ち続けていった。カターニャの先制点もこういった形から生まれたものだった。結局のところ、これをやられるとユヴェントスの3バックは意味をなさない。カターニャは数的有利を作れるスペースで簡単に勝負するという策によってユヴェントスの守備陣を苦しませたわけだ。

次に、カターニャの守備面に移ろう。守備面においても、モンテッラ率いるカターニャが狙いを定めたのはユヴェントスの司令塔であるピルロであった。好調時のユヴェントスではマルキージオやビダルといった選手が、凄まじい運動量を見せてピルロのサポートをしながら攻撃の組み立てを助けていたため問題は無かったのだが、この試合はどうしてもサポートが少なくピルロから後ろとピルロから前で間延びする場面が目立った。次の図のような形である。

それに対しカターニャは前線の3人が、ピルロを取り囲みながら近い人間が厳しくプレッシングをかける事でピルロの精度を奪い、ユヴェントスの攻撃を狂わせる。また、セカンドボールがピルロに集まるような状況を作り出そうとしていた。序盤は、この策が成功してピルロにプレッシャーをかける事で前線に厚みを出させることなく、またいくつかボールを奪い取ってチャンスを作り出す。つまり、カターニャは攻守に渡ってピルロを狙うことで、ユヴェントスを苦しませる事に成功していたわけである。

しかし、カターニャはユヴェントスの圧力に屈する。

ユヴェントスが少しずつチャンスを増やし始め、ボリエッロとクアリアレッラの2トップが強引ながら怖いプレーを見せ始める。そうなってくると、先制した得点を守り切ろうという意志も合わさってカターニャは押し込まれるがままに退陣。次の図のようにWGだったバリエントスを3センターの右に配置する事によって5‐3ゾーンを作り、守備を固めようとしたのである。

だが、一見すると、理に適っているように感じられるこの選択がピルロに自由を与えてしまうことに。そして結局、ユヴェントスは水を得た魚の様にバランス良く攻撃を仕掛けることによって、カターニャを容易に攻略していったというわけだ。

さて、ここで面白いのは、「ただ後ろを固める」という事はユヴェントス対策にはならないという事である。

前からのプレッシャーがかからなくなり、かつ前の枚数が3枚から2枚に減ったことで、この試合ではキエッリーニがボールを持ち上がるような場面が増加。安全策に出たことにより、結果的には、ユヴェントスの厚みのある攻撃を受けてしまう展開になってしまったのである。

序盤戦のような圧倒的な運動量という武器が使えなくなりつつある今、ユヴェントスはピルロ次第という部分も大きい。攻撃、守備の両方でピルロの位置は非常に重要なポイントとなることは疑いようが無いのだ。この試合では、ユヴェントス対策の一つの形が見えたわけだが、週末の大一番ユヴェントス対ミランでは、ミランがどのように攻略してくるか。そしてコンテ率いるユヴェントスは、好調ミランに対していかなる策を練ってくるのか・・・。

以上の点に注目しながら、本日の早朝4時45分から行われる首位攻防戦を楽しみに待ちたい。

※フォメ―ション図は(footballtactics.net)を利用しています。

筆者名 結城 康平
プロフィール サッカー狂、戦術オタク、ヴィオラファンで、自分にしか出来ない偏らない戦術分析を目指す。
ツイッター @yuukikouhei

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