3月14日に国立競技場で行われたロンドンオリンピック最終予選C組最終節U-23日本代表対U-23バーレーン代表の一戦はU-23日本代表が2-0でU-23バーレーン代表を下し、日本代表は5大会連続となるオリンピック出場を決めた。今回はこの熱戦を振り返るとともに本大会の展望も述べていきたいと思う。
まず、この試合の日本代表のスタメンを触れておきたい。
今回のバーレーン戦は、これまで1トップを務めてきた大迫が出場停止ということで、前線の組み合わせも大きな注目点。快速FW永井が1トップの位置に入るという予想もあったが、関塚監督は大津を最前線で起用し、2列目に清武、東、原口を並べる形で大事な一戦に臨んだ。
・持ち味を発揮した「前線のカルテット」
上記にあるように、大津、清武、東、原口という前線の組み合わせは、これまでには無かった形であり、個人的には上手く機能するかどうか不安な部分もあった。しかし、筆者の心配は杞憂に終わる。1トップに入った大津がしっかりと潰れ役となり、攻撃の起点として自らの役割を全うすれば、2列目に入った清武、東、原口はポジションチェンジを繰り返し、相手DFをかく乱。4人とも持ち前のボールスキル、ドリブル,パスセンスを存分に披露し、崩しの場面で違いを生み出していた上に、守備の部分でもしっかりとボールホルダーへプレスを掛けるなど、チームのためにプレーする姿が印象的だった。慣れないポジションでのプレーは本人にとっても間違いなくプラスになるだろう。ドイツで逞しく成長を続ける大津にはこれからも特大の期待をしていきたい。なお、大津本人は試合後に以下のように振り返っている。
「(1トップは)あんまり自分もやったことなかったんですけど、しっかりとポストやつぶれ役をやりながらゴールを狙うということですね。得点は取れなかったですけど、勝てて良かったと思います。もちろん、サイドの方が自分の持ち味は出ますけど、今回は形的にしょうがないというか、そういうつもりで1トップに入りました。その中でも、とりあえず勝てたことが今は1番デカいんで」
「(心掛けたことは)やっぱり中盤の良さを消さないことと、自分が得点を取りに行くことも考えながら、周りの良さを生かすということは意識してました。ポストプレーをこなしたり、クロスの時に飛び込んでいったりというのは意識してました」
「クラブでも1トップはやってないですよ。2トップなんで。(相手を)背負ってのプレーはプロ1年目以来ですね。あんなに背負う形はすごく新鮮だったし、新しい形だった。ポジションの幅を増やしていければ自分にとっての成長にもつながるし、そういうところでいろんなポジションができることはネガティブなことじゃない」
・論議を呼びそうな「オーバーエイジ」
バーレーン戦で快勝し、見事ロンドンオリンピックへの出場権を獲得した関塚ジャパン。本大会に臨むメンバーは18人しか登録できないため、熾烈なメンバー争いが予想されるが、同時に「オーバーエイジ」についても論争が巻き起こるだろう。
「オーバーエイジ」について簡単に説明すると、
オリンピック本大会の登録メンバーは五輪開催年前年の12月31日現在で23歳未満の選手のみ登録することができるが、この年齢制限に適合しない選手であっても各チーム3名を上限として登録可能とする
ということである。
そして、日本五輪代表の歴史をひも解くと、
・アトランタ(1996)監督:西野朗→オーバーエイジ枠使わず。
・シドニー(2000)監督:フィリップ・トルシエ→GK楢崎正剛、DF森岡隆三、MF三浦淳寛を招集。
・アテネ(2004)監督:山本昌邦→GK曽ヶ端準、MF小野伸二を招集。
・北京(2008)監督:反町康治→MF遠藤保仁を招集したものの、遠藤が大会前にウィルス感染症に罹り、本大会への出場は叶わず。
このように、これまでの4大会のうち、3大会でオーバーエイジ枠を活用していることがわかる。
(北京オリンピックでは結果的に活用したとは言えないが)ロンドンオリンピックでも活用する可能性があるが、オーバーエイジ枠を活用することによって、チーム力が向上するかといえば、必ずしもそうではないだろう。確かに、経験豊富な選手がチームに加わることで、チームに「落ち着き」をもたらしたり、「勝者のメンタリティー」を若い選手たちに植え付けるといったことが期待できる。だが、その一方で、連携面での不安であったり、それまでチームが築き上げてきた「ベース」が揺らぐ可能性もある。関塚監督がオーバーエイジ枠をどのように活用するかについては大変興味深い点であることは間違いない。
しかし、本大会に向けての新戦力は何も「オーバーエイジ」だけではない。23歳未満の選手で、関塚ジャパンに余り縁のなかった選手は数多く存在するのだ。
その筆頭格と言えるのが、すでにA代表で主力として活躍する香川真司(ドルトムント)だろう。また、海外組では、先日のウズベキスタン戦でA代表に初選出された宮市亮(ボルトン)、同じくこちらもA代表に呼ばれた経験を持つ宇佐美貴史(バイエルン・ミュンヘン)。さらに、筆者が面白い存在であると考えている長身FW指宿洋史(セビージャ・アトレティコ)、今冬にアルビレックス新潟からシュトゥットガルトへと移籍した酒井高徳といった選手たちが本大会に招集される可能性があるはずだ。
そして、柴崎岳(鹿島アントラーズ)、金崎夢生(名古屋グランパス)、久保裕也、宮吉拓実(京都サンガ)、小野裕二(横浜F・マリノス)、茨田陽生(柏レイソル)、高木俊幸(清水エスパルス)といった国内組の選手たちはJリーグでの活躍次第では、メンバー入りを果たすかもしれない。
・権田「世界でどれだけできるか楽しみ」
今回のバーレーン戦でキャプテンを務めた権田は試合後このようなコメントを残した。
「(五輪に向けては)やっとつかんだ舞台なんで、そこにホントにベストの状態、ベストのチームで行けるようにしたいです。それまでの準備が大事だと思うんで、また3日後にリーグ戦がすぐ待ってるんで、そこから準備し、回数は限られてますけど合宿とかでチームをより高いレベルに持って行けるようにしたいです。このチームがどれだけ世界でできるのかってのは本当に楽しみです。試す価値はあると思うし、世界でやれたら本物だと思うんで、本物を目指して頑張りたいです」
幾度となく試練、逆境を味わった関塚ジャパンであるが、その度に選手たちは逞しく成長し、どのような相手でも冷静に対応することができるようなチームになったのではないだろうか。筆者も権田と同じく、このチームが世界でどのくらい通用するかを非常に楽しみにしている。
「U-23世代は可能性ある選手も多く、たくさんの伸び幅があるので、もっと成長してくれると思う」と語る関塚監督のコメント通り、ロンドンオリンピックまでの約4ヵ月間、選手たちがどのように成長するか。各所属クラブで奮闘する若きサムライたちから今後も目が離せない。
2012.3.15 ロッシ
※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。
筆者名 | ロッシ |
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