夏の主役は誰だ?

欧州のサッカーシーンは中盤戦を迎え、リーグ戦もチャンピオンズリーグも大きな盛り上がりをみせているが、シーズン終了後のマーケット解禁へ向けてたくさんの移籍話が浮上している。Qoly編集部ではこの夏の去就が注目されている11人の大物をピックアップしたのでご紹介しよう。

昨夏の主役、スナイデル

「移籍は避けられない」と各方面で書き立てられているのはインテルとオランダ代表の10番だ。スナイデルの今季は非常に苦しい物となっている。昨夏はマンチェスター・ユナイテッドへの移籍が決定的と報じられた後に残留。ガスペリーニ前監督の下でも、ラニエリ監督の下でも居場所を見つけるのに苦しんでいる。

ユナイテッドは興味を失ったと言われているが、プレミアリーグからの誘いの声は多い。盟友ファン・デル・ファールトのいるトッテナムやビラス=ボアス監督を解任しチームの大改造が噂されるチェルシー、そしてプレミアリーグで首位を走るマンチェスター・シティは1月に移籍交渉が行われたとも言われているが、どれも噂の域を脱出してはいない。未だ本命の見えないスナイデル獲得レースだが、EURO終了後には再び引く手あまたとなっている可能性も大いに存在する。

ミランとの蜜月は終了?パトは移籍を受け入れるのか?

「度重なる負傷にミランがさじを投げた」、「1月に移籍合意したPSGに移籍する」、「パトの売却益でファン・ペルシー獲得へ」。ミラニスタのアイドル、パトの去就は現在最も紙面に書き立てられている選手の一人だ。まだ22歳とこれからの伸びしろに期待持てる選手だが、ミランは怪我の多さに見切りをつけたのか移籍の噂は止まる気配がない。

ミランが移籍を容認すると言われる背景としてはいくつかの要素が考えられるが、パトが「アレッグリ体制下で3番目のFWであること」と、「まだ若く高額での売却が見込めること」が大きな要因だろう。また、シェフチェンコ、カカを絶頂期に高額移籍金で売却し、その後彼らが芳しい活躍をできなかった歴史を引き合いにした「パトの負傷癖は治らない」という穿った見方さえある。移籍先として有力視されるのはPSG、レアル・マドリー、チェルシーだが、最も有力なのは恩師アンチェロッティとレオナルドの待つPSGだろう。パトが受け入れるか否かではないだろうか。

アザールは本物か?

リールのベルギー代表MF、アザールは昨夏から移籍の注目を集めている選手だ。昨季リーグ・アン制覇に貢献したことで世界的にブレイク。来夏のマーケットでは必ずや移籍を果たすと見て間違いない。

アザールに興味を示しているのは、アーセナル、トッテナム、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、レアル・マドリー。特にアーセナルとトッテナムは獲得に本腰と言われている。アーセナルは昨夏にセスクとナスリを放出した後、アザールの確保に動いたが最終的には実現せず。今季は苦しい戦いを強いられているだけに、是非とも獲得したいところだ。トッテナムはレドナップ監督が興味を示していると度々報じられている。北ロンドンのライバルであるアーセナルを出し抜いて獲得するため、まずはチャンピオンズリーグ出場権を確保したいところだろう。

レアル・マドリーはスポーツディレクターを務めるジダンがアザールを賞賛しており、中盤の整理が進めば獲得の可能性はあると言われているがモウリーニョ監督が関心を示しているかは不透明だ。マンチェスター・ユナイテッドのファーガソン監督もアザールに注目している一人だ。3月10日に行われたリヨン対リールの試合をスタジアムから観戦した模様で、アザールをチェックしに来たと言われている。

注目を集める一方、アザールに懐疑的な目を向ける人も多い。元フランス代表のレジェンドであるプティはアザールの実力を「まだワールドレベルではない」と考えているようだ。リーグ・アンから他リーグへと活躍の場を求める選手は多いが、アザールはその実力を示すことができるのだろうか。

移籍必至のテベスだが、行き先は不透明に

1月のマーケットで最も注目を集めた選手がマンチェスター・シティのアルゼンチン代表FWのテベスだ。テベスとミランは契約合意したが最終的にシティとミランは移籍金で合意することができなかった。最終的に残留が決まり、マンチーニ監督に謝罪する形でチームへ復帰したテベスだが、来たる夏に放出されることは間違いない。しかし、1月のマーケットが開く直前と比べると全体的に移籍の噂がトーンダウンした印象は否めない。

ミランは未だに興味を示していると報じられているが、シティが満足する移籍金を捻出するという点ではミラニスタのアイドルであるアレシャンドレ・パトの放出は避けられないだろう。また、ミランの前線の選手のダブつきも気になる。イブラヒモヴィッチ、ロビーニョ、パト、マキシ・ロペス。そしてカッサーノも復帰する。ミラン移籍は現実的ではなくなったという考えも間違いではない。

選手のダブつくミランと比べ同じく獲得に興味を示してきたPSGも有力な移籍先の一つ。しかし、PSGのメインターゲットがミランのパトであることは周知の事実だ。「パトがPSGへ移籍し、テベスがミランへ移籍する」というのが現実的と言われているが、夏までには他の選択肢が浮上する可能性も否めない。昨季のプレミアリーグ得点王は来季どこでプレーするのだろうか。

フッキはトップクラブでチャレンジする時が来た

ポルトのブラジル代表FWフッキは来夏ビッグクラブへの飛躍を期待される選手の一人だ。既に移籍の噂は多く浮上しているが、ポルトとの契約は2016年まであり、1億ユーロの違約金が設定されているという。高額な移籍金が必要となるため、獲得できるクラブは非常に限られている。しかし、最も獲得に近いと言われていたチェルシーはポルトでフッキと共に働いたヴィラス=ボアス監督は更迭。フッキの実力を疑う必要性はないが、来季就任する新監督次第ではチェルシーの獲得リストから外れる可能性は多いに有りうるだろう。

スペインの2強は移籍先として噂が浮上し、フッキ自身が移籍先として望んでいると言われているクラブだ。資金力のある白い巨人は来季多くの余剰戦力を売却するすると言われている。クリスティアーノ・ロナウド、エジルらと共に攻撃陣を形成する可能性は大いにありうるだろう。一方のバルセロナは前線の陣容は充実しており、獲得には3600万ポンドは必要と言われるだけに本腰を入れるかは不透明だ。

そしてマンチェスターの2強も有力候補である。資金力のあるシティは言わずもがなであり、ポルトの要求する金額を満足に支払える唯一のクラブだ。今季CLで結果を残せなかったユナイテッドは来季の目玉として獲得を考えていると報じているが、信ぴょう性はそれほど高くない。

斜陽のカカ。環境を変え、再び陽の目を浴びるべきだ。

かつてのバロンドーラーもレアル・マドリーに移籍以降は怪我のせいもあって際立った活躍を見せることができていない。昨夏は移籍を断って不退転の決意で残留したが、今度の4月で30歳を迎えるだけに今一度ミラン時代の様な輝きを取り戻して欲しいと願うファンも多いことだろう。

移籍先として本命視されているのはチェルシーとPSGだ。チェルシーのオーナー、アブラモビッチはカカのファンであることは公知であり大金払っても獲得したいと考えている。またPSGではかつての恩師アンチェロッティが監督を、自身をイタリアへ連れてきたレオナルドがスポーツディレクターを務めており、ミランのパトと共にカカはクラブのメインターゲットである。

そして最後の選択肢として考えられるのはミランへの復帰だ。代理人を務める父親のボスコ・レイチはミランの幹部と頻繁に連絡をとっている。ミランは過去にも放出したスター選手を復帰させてきた歴史があるだけに実現する可能性がゼロではない。しかし、同様のパターンで成功した例は筆者の記憶には無い。ミランがかつてのアイドルをどう見ているか非常に気になるところだ。まだ老けこむ歳ではない。母国開催のワールドカップを見すえ移籍先を探る夏となるだろう。

香川の同僚は列強のターゲット。ドルトムントはゲッツェを守れるか?

ドルトムントのゲッツェも欧州列強から引く手あまたの存在だ。19歳でドルトムントを優勝へ導き、ドイツ代表に招集。現在は「ドイツ史上最高の選手になる可能性を秘めた選手」と評されている。

昨夏はアーセナルからの関心が報じられたが、44億円のオファーをドルトムントが断ったと言われている。アーセナルは現在も関心を失っておらず、チーム再構築のために2500万ポンドを払って獲得したいと考えているようだ。現在は負傷離脱中だが、復帰後は移籍の噂も再燃するだろう。19歳のドイツ代表に注目するのは前述のアーセナル以外ではレアル・マドリー、バルセロナだ。ゲッツェ自身もリーガ・エスパニョーラへの移籍を夢見ていると言われる。

しかし、ゲッツェが来夏移籍する可能性は非常に少ないと考えられている。ドルトムントはボルシアMGのロイスを獲得することを決めているが、それはドルトムントが欧州での復権を狙っているからであり、ロイス加入は現在のチームの強化。ゲッツェ放出の後押しとはならないだろう。それでも去就が注目を集めるオファーが届く事は必至。ドルトムントはゲッツェを死守できるのだろうか。

ファン・ペルシーの去就に注目が集まるが・・・

アーセナルのファン・ペルシーは来季いっぱいで契約が切れる事から頻繁に移籍の噂が浮上している。最近注目を集めたのはマンチェスター・シティのマンチーニ監督が興味を示しているというニュースだ。シティの指揮官は「獲得できるならばもちろんターゲット」というニュアンスの表現だったが、アーセナルは近年シティに多くの選手を売却している為、グーナーの怒りに火をつける格好となった。また、昨年末はバルセロナ入りが盛んに報じられていたが、これもアーセナルからバルセロナへの選手の流れが多い事に対する意味あいが強く、現時点では信ぴょう性の低い提案型の噂と見て問題ない。

本気で獲得を試みる可能性があるのはCLで激突したミランではないだろうか。代表取締役のガッリアーニも監督のアッレグリも能力を賞賛しつつも獲得を肯定することも否定することもせず。過去にオランダ人が成功してきた歴史を持つだけに、テベスよりもファン・ペルシーに向かう可能性のが高いと予測する識者も多い。

ネイマールの欧州挑戦は?

昨年末のCWCでも存在感を発揮し、ブラジルの超新星であるネイマール。クラブ100周年を祝うという名目もあって移籍の許可が降りなかったが、来夏こそは移籍すると言われている選手だ。サッカーの王国は多くのスーパースターを生み出してきたが歴史を作る可能性のある選手だけに、移籍金もかなりの額になるだろう。昨夏報じられた移籍先は複数あったが、現実味があって移籍先として有力視されているのはスペインの2強だろう。特にレアル・マドリーのペレス会長は金に糸目をつけず獲得をしたいと願っているに違いない。

しかし、夏の移籍を懐疑的に見る目もある。それは20歳の怪物は「2014年の母国ワールドカップの終了後に移籍すべき」という考えに基づいている。もちろん移籍のリスクも存在する。ネイマールほどの才能を持っていても、所属するクラブにフィットしない可能性も存在するからだ。しかし、移籍実現が2年後とするとネイマールはCWCで悔しさを味わった我慢できるのだろうか。

エアー移籍は勘弁!本田圭佑をロシアから連れ出せ!!

本田圭佑のラツィオ移籍騒動は多くの日本人の注目を集めた。結果的にCSKAモスクワ側が移籍金について譲歩することなく交渉を打ち切った格好となり、日本のファン、特にセリエAのファンは大いに残念に思ったことであろう。しかし、1月に移籍が実現しなかった事を高評価しても良いのではないだろうか。1月のマーケットは負傷者を抱えるクラブや現状に満足していないクラブが積極的に動く為、移籍先が非常に限定的になってしまうのである。今回ラツィオが本気でCSKAと交渉した結果、CSKAから本田の売却意思を引き出したことは好材料と捉えたい。代理人の動き次第では夏のマーケットで獲得に挑むクラブが多く現れることが期待できるからだ。

未だ目立った移籍候補は出現していないが、シーズン終了が近づくにつれて多くの噂が飛び出てくるだろう。6月の誕生日を過ぎると本田は26歳になる。おそらく次回の移籍はキャリア最大の転機。エアー移籍ではなく、移籍実現を期待したい。

最後に注目されるのは・・・

最後に挙げるのはレアル・マドリーのモウリーニョ監督だ。CLでベスト8に進出し、リーガでは首位を独走。しかし、「スペシャル・ワン」の去就は非常に不透明になっている。

たびたびロンドンに戻ってくると報道されるのは、イングランドのメディアからのアプローチと捉える事もできるが、スペシャル・ワンは、CLを制覇した場合間違いなくクラブを離れるだろう。モウリーニョ本人もプレミア復帰を視野にいれていると言われており、ディ・マッテオ暫定監督で凌いでいる古巣チェルシーと、レドナップの代表監督就任が濃厚なトッテナムは是が非でも監督就任を願いたい所ではないだろうか。

また、マンチェスター・シティの監督に就任する可能性もあると私は考えている。ユナイテッドと優勝争いをしているシティだが、優勝を逃した場合は、マンチーニを更迭してスペシャル・ワンにチームを託すかもしれない。インテルの監督交代の再現だが、資金力のあるシティにとっては全く問題のない事だ。

移籍は発表されるまでわからないが・・・

以上がQoly編集部で取り上げてきた移籍の噂をまとめたものである。しかし、クラブのオフィシャルから発表されてこその移籍。「移籍は発表されるまでは・・・」という言葉が方々から聞こえてくる様に、一喜一憂しながら噂を楽しんでいただけたら、と思う。

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