まず初めに伝えるべきことはバイエルン・ミュンヘンが見事決勝進出を果たしたということだろう。ホームでの決勝開催となった今季に決勝まで勝ち上がるというのはなかなかの快挙だ。

そして、ここでは激闘となったバイエルン・ミュンヘンvsレアル・マドリーという因縁対決を、ホーム&アウェーの2戦をまとめて振り返りたい。

ファーストレグはホームのバイエルンがアウェーのマドリーを下したことはみなさんご存じだろうが、この結果にどういう印象をお持ちだっただろうか?

(筆者はバイエルンファンなので偏った見方になるかもしれないが)内容としては、バイエルンの完勝だった。ここでいう完勝とは相手を寄せ付けず3対0のようなスコアで勝ったことを指すのではなく、バイエルンが要所を締め、試合巧者ぶりを見せたということだ。確かに失点はしたが失点シーン以外では守備陣は気迫のこもったプレーでシャットアウトし、ゴメスの決勝ゴールにしても「ホームで勝つ」という目標に向け、前へ前へと進み続けたご褒美といえるだろう。

当たり前のことかもしれないが、このレベルの試合では、ホームチームとも言えども前に出続けることは強い勇気を要するものだ。これを私は「彼らは試合巧者だった」という言葉で評価したい。

試合前、マドリー有利という見方が世間では多いように見えた。よって「ホームでもマドリーが勝つ」とまではいかないものの、「良いスコアで本拠地サンチャゴ・ベルナベウに戻れるだろう」という楽観的なマドリーファン、又は決勝クラシコを望むフットボールファンが散見された。

たしかに、ドルトムントとの天王山に敗れ、直近のリーグ戦でも格下相手に引き分けるという悪いチーム状態。だが、それでも私は「バイエルンにとって相性のいいホームゲームで負けることはないだろう」と楽観視していた。そして、最悪でも引き分け、逆に最高でもマドリーの攻撃陣を持ってすれば、アウェーゴールを奪われるであろうことは覚悟していた。ある意味、私にとって最も順当で予想通りの結果になったと言える。

ここでバイエルン、マドリー両陣営のコメントをいくつか紹介させてもらう。

「2-1は危うい結果でもあるが、我々の攻撃力を持ってすればいつでも点は奪えるはずだ」(ゴメス)

「(第1戦で勝利し)勝ち残るチャンスはいくらでも残されている」(ミュラー)

「負けはしたが状況はいい」(モウリーニョ)

「失点はどちらも不運だった。だがホームでの試合は勝つと確信している」(エジル)

これらのコメントから私が言いたいことは当事者がはじめからファーストレグよりセカンドレグを重要視していたということだ。勿論勝ったバイエルン陣営からはハインケスやラームなど純粋な喜びのコメントもあったが、裏ではこんな考えも働いていたのではと考える。それは「相性のいいホームでは勝利を当然とし、勝負はアウェーの2戦目」ということである。

また、マドリーも同じで敗戦後のコメントはどうしても負け惜しみのようになるが、まだ90分あるという余裕すら感じさせるコメントはなんの強がりでもなかったはずだ。なぜなら、今季マドリーはホームで絶対的な強さを誇り、第1戦も敗北こそしたが、アウェーゴールを奪ったというポジティブな見方ができるからである。そして、どこかでマドリーの選手たちは「相手の方が強かったから負けた」というより、「自分たちが振舞い方を間違えた」というある種、驕りのようなものもあったのではと選手のコメントを見て私はそう勘ぐってしまった。

このような思惑が感じてとれて迎えた第2戦。クラシコで勝利し波に乗るマドリーとドルトムントに優勝を許したばかりのバイエルンというチーム状況であったが、結果は周知の通り、2-1でマドリーがタイスコアにしたものの、PK戦の末にバイエルンが勝利した。

モウリーニョの思惑としては、前述の通り、ホームでならファーストレグのビハインドは全く問題にならないと考えていたはずだ。そしてまんまとマドリーは序盤で2点を先取し、これ以上ないほどにゲームプランにはまったと思われた。しかし、実際は立ち上がりさえ悪かったが、本来のサッカーを展開できていたバイエルンはしっかり盛り返し1点を前半のうちに返すことに成功した。

私個人の意見としては、マドリーが2点を先取したときに、その後の立ち振る舞い方を決定するべきだったと考える。確かに守りに入るには前半の14分とあまりに早い時間だったが、モウリーニョであればそこからでも抜け目なくやってくると考えていた。そうまでしなくともチームが浮ついてしまったのは事実である。

しかし、試合はここから思いのほか膠着してしまう。なぜこうなったのかを説明するためそれぞれの立場を代弁しよう。

まず、マドリーは能動的にスコアを動かそうという気はなかった。なぜなら、前に出ることによって得点が奪えればよいが、バイエルンDF相手に崩せた場面はここまで皆無であり、追加点を重ねる自信がない上に、うっかりカウンターから失点しようものなら突破するには2点が必要になるというリスクに怯えていたからだ。 一方、バイエルンは失点しても1点奪えばいいという気持ちから試合を優位に進めた。しかし某FWの大ブレーキによってこちらも結局最後までスコアを動かすことはできなかった。

その後は周知の通り、PK戦で世界屈指のGK2人によるスーパーセーブ合戦が行われた。そして惜しくも敗れたカシージャスは試合後にこう発言した。

「PK戦は宝くじのようなものだ」

確かにその通り。しかし筆者はこう思えてならない。

ファーストレグで果敢に前に出て勝利をもぎ取ったバイエルンとセカンドレグでアウェーゴールに怯え攻めきれなかったマドリー。サッカーの女神が微笑む相手は既に決まっていたのではないかと。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

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筆者名 平松 凌
プロフィール トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター @bayernista25
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