少し前に「エースストライカーの務め」というものを執筆したことを覚えていただけているであろうか?

今回はそれの続編とでも言えるものにしようと思う。そのときはマリオ・ゴメス一人をピックアップしたものだったが、今回はこのタイミングで書くということでCL決勝というビッグマッチを絡めつつ今後のバイエルンについて分析していきたい。

ここでまず伝えるべきことはチェルシーの初優勝である。

心からおめでとうと言うのは、そのときスポーツバーでドイツ人と涙に暮れていた筆者にとって容易ではないが、チェルシーが勝者にふさわしかったと私は思う。

この試合両チームのフォーメーションは同じではなかったが、共通点はあった。それは1トップということだ。厳密にはチェルシーは3トップだったかもしれないが、試合展開においてドログバは前線で完全に孤立していたのでもはや1トップと表現するのが適切だろう。ここでさらに説明するべきは、試合の大半をバイエルンが支配しパスをひたすら回しゴールを試みていたということである。チェルシーはロングボールを放り込んでの攻撃が中心であり、FWにとってプレーしやすいのは当然前者だろう。そしてその前者でパス回しに参加しながらシュートチャンスを窺ったのがゴメスであり、ロングボールをひたすら競り合ったのがドログバである。そこでの2人の活躍はどうだっただろうか?

ドログバはロングボールの競り合いを8割方マイボールにすることに成功し、ワンチャンスを決め、おまけに試合終了を告げるPKまで決めた。誰がなんと言おうとこの試合の主役は彼であった。

一方のゴメスは試合の大半の時間存在を消し、ときたま訪れたシュートチャンスをふいにした。これがゴメスのクオリティを端的に表した結果である。

ある人は言うかもしれない。「今日はゴメスの日ではなかった」と。

しかしそんなことは決してないだろう。ロングボールを入れられてもダヴィド・ルイスに空中戦で完敗し、楔が入っても地上戦でミスを犯す。

これこそがゴメスの本質であり、調子云々ではないということをバイエルン首脳陣はいい加減認めるべきだ。
バイエルンはこれで準3冠というもの達成してしまった。リーグではドルトムントという新たな強敵に後塵を拝し、CLではまたしてもトップクラスにおいての戦いの弱さを見せてしまった。

そこでバイエルンはやっているサッカーを進化させないといけないかもしれない。

今やっているものは世界屈指のチャンスメ-カー達ができるだけ多くのチャンスを、決定力においてやや秀でたものを持つゴメスに与え得点を狙うか、チャンスメーカーであると同時にストライカーでもある彼らが独力で得点を奪うかというやり方である。

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しかしそれではドルトムントや今回のチェルシーのような組織でしっかり守れるチームには通用しない。なぜならロッベン、リベリなどの優秀なアタッカーであっても複数人で対応することで十分に決定的な仕事を防げるからだ。そして彼らが試合から締め出され残る面々は自分たちの攻撃の引き出しを見失い、そして、自信をなくすというのがバイエルンの必敗パターンである。

では先ほど述べたサッカーの進化とはどういうことだろう。

私が思うにタレントのある選手をより活かすということがチーム力の向上への近道だ。そのために必要なものはそのタレントあふれるスーパースターを活かすことのできる選手(FW)である。今のバイエルンのスーパースターたちは個の力で活躍し、時に味方を活かすことはあっても活かされることは皆無である。彼らが活かされるようになれば今の状態でもファンを期待させるところまで勝ち上がりそこからどん底に落とすくらいには強いバイエルンにとって鬼に金棒である。

「エースストライカーの務め」ではマリオ・ゴメスが得点以外でもチームに貢献している姿を見たときに初めて真のエースストライカーとして評価したい、と締めくくらせてもらったがどうやらそれはもう叶わぬ夢らしい。

確かにゴメスは今季のチームトップスコアラーでありストライカーとしての仕事を十二分に果たした。相手チームに恐れられるという意味ではエースストライカーであっただろう。

がしかしそもそもエースストライカーとは何だ?チームの勝利に貢献することではないのか?

得点は勝利に貢献する要素ではあるが、エッセンシャルではない。そして今のバイエルンに必要なのはゴメスの得点能力ではなく”誰か”の周りを活かす能力なのだ。なぜなら後者がいたほうが強くなるように私には思えるからだ。

誰が欲しいだの机上の空論はまた違う機会に考えるとし、来季バイエルンがどのようなメンバーでどのようなサッカーを展開しているかを楽しみにして来シーズンまで首を長くして待っていることにしよう。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

筆者名 平松 凌
プロフィール トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター @bayernista25
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