スペインの連覇で幕を閉じたEURO2012、一ヶ月に渡る熱狂もこれで一休み。毎晩、深夜に一喜一憂し寝不足になったサッカーファンも多かったことだろう。 スペイン代表はEURO2008、2010年W杯、EURO2012と3連続で大きなタイトルを奪取。W杯→EUROと優勝を果たした1998年-2000年のフランス代表を超えた“トリプル”という前人未到の大記録を達成した。

スペインの前評判は決して高いものではなかった。エースストライカーのビジャ、センターバックの要であるプジョルを怪我で欠いたことで、さすがにEURO→W杯→EUROと連続しての優勝はないだろうとどこか冷めた見方をするものが多かった。優勝を果たしたスペイン代表のデルボスケ監督は「偉大なこと」と選手を称えたが、メンバーを欠いたことを逆手にセスクやシルバをトップにすえる0トップシステムを用い、要所でフェルナンド・トーレス(結果的にゴールデンブーツ)を起用する策を講じたことは“偉大な手腕”と言わざるを得まい。

今大会を総括するとフットボールのロジカルな部分が強調された試合が多かったと思う。こう着状態が続く試合が多く、準々決勝のイタリア-イングランド、準決勝のポルトガル-スペインと2試合続けて0-0の末、PK戦での決着ということもありその印象は特に深いものであった。組織的な中盤とDFラインを突破しても守護神が立ちはだかるチームを崩すことは容易ではない。事実、スペインは決勝トーナメント以降を無失点で終え、イニエスタ、シャビら攻撃陣が注目される中で守備陣は影のMVPとなった。準決勝でイタリア代表FWバロテッリの2発に沈んだがスペインと並び高い完成度を示したドイツ、攻撃陣のふがいなさをペペを中心とする4バックで補ったポルトガルやスルナ、ストルニッチを中心にした両サイドアタックを徹底しイタリア、スペインを苦しめたクロアチアといったチームは短い準備期間の中でも普段クラブシーンで見せている様な“高い戦術の徹底”を見せた。

特にデ・ロッシをスリーバックのセンターに入れた“ぶっつけ本番”の攻撃サッカーを掲げたイタリアは初戦でスペイン相手に1-1で引き分けると決勝にまで進出。スペイン相手の再戦となった決勝では0-4で同スペインの前に沈んだものの、“今回のアッズーリは小粒”、“親善試合でロシアにぼろ負けする様では・・”と世界中から起こった不満を吹き飛ばした。第三戦以降は4-3-1-2にシステムを変更し個人技を中心に中央をこじ開ける策をとったが、ピルロ、デ・ロッシを核に両サイドがどんどん上がっていくことでパスコースが前に幾つもあるスタイルは、“カテナチオ”を信奉し前線に2-3人を残す以外は自陣に引きこもっていたかつてのアッズーリを過去の映像とした。“イタリアの試合は面白い”と世界中で評判を呼び結果重視のイタリア国内でも絶賛されたのもうなづける。

その一方で、チームとしての成熟度が低いフランスやオランダといったチームは醜態をさらした。特にオランダはW杯準優勝の2年後にまさかのEUROグループリーグ敗退となり、W杯準優勝チームは2年後のEUROでグループリーグ敗退するジンクス通りとなってしまった。

唯一残念だったのはポーランド、ウクライナの2チームが揃ってグループリーグ敗退をしてしまったことだ。今大会ではアイルランドのサポーターが早期敗退にもめげず熱い応援を送り賛辞の声が送られたが、ウクライナ代表FWシェフチェンコのゴールという好材料はあったもののこの2チームのどちらかがベスト8入りを果たせば開催国での盛り上がりはより一層のものだったと思う。ホテルや交通手段に難がありチケットをとったはいいものの現地まで行くのを断念したファンは多かっただけに、ピッチコンディションなど大会運営も含めてこの2カ国はより一層の努力を求めたかった。

(筆:Qoly編集部 Q)

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