9月11日に埼玉スタジアムで行われたブラジルW杯アジア最終予選第4戦で、1-0と苦しみながらもジーコ率いるイラクを退けたザックジャパン。この勝利によって、B組首位を守り、W杯出場にまた一歩近づくこととなった。

この試合で虎の子の1点を決めたのが、豊富な運動量と質の高いポストワーク、優れた得点感覚を併せ持つ日本屈指のFW前田遼一だ。また、イラク戦の前に行われたキリンカップのUAE戦では、ハーフナー・マイクが自らの武器であるヘディングでゴールをマークし、ザッケローニに自身の存在を大きくアピールすることに成功。怪我のためしばらく代表から遠ざかっている李忠成も虎視眈々と代表復帰を狙っており、今後も限られた1トップの座を巡って激しい争いが展開されるだろう。

だが、筆者は長らく「得点力不足」が叫ばれてきた日本代表において、新たなフォワード像が求められると考えている。それは、テクニックに長け、日本人離れしたフィジカルを持つ本田圭佑の「0トップ」だ。

・香川の持ち味を生かすために

筆者が本田の「0トップ」を理想とする理由のひとつとして香川真司の存在が挙げられる。なぜなら、本田を最前線で起用することで、香川の持ち味を最大限に生かすことができるからだ。香川の特筆すべき特徴・武器は

「前線で動き回りながらスペースを探し、味方からパスを受け、そのパスをすぐに近くの味方に渡す動きを繰り返すことで、チームの潤滑油として、エンジンとして働けること」

である。その持ち味が最大限に生きるのがトップ下であり、大活躍を見せたドルトムント、今夏に移籍したマンチェスター・ユナイテッドでもこのポジションで起用されている。

だが、現在の代表では、本田がトップ下で起用されていることから、左サイドでのプレーがメインとなっている。しかし、左サイドでプレーする香川はどこか窮屈そうであり、徐々に連携が深まってきたとはいえ、中央の本田と動きが被るシーンも散見される。この2大エースを共存させるためにも、本田の「0トップ」は有効な解決策となるのではないだろうか。

また、豊富な2列目の選手たちを多く起用するためにも、本田の「0トップ」は理想的であると言える。多種多様な2列目の選手たち(香川真司、岡崎慎司、清武弘嗣、宮市亮、宇佐美貴史、大津祐樹、原口元気など)が次々と出現しつつある日本代表が標榜すべきスタイルは、前線のテクニックに優れた選手たちが流動的に、連動して崩すスタイルであり、この強みを生かしたサッカーを展開するには、“古典的な”「9番」ではなく、“モダンな”「9番」を最前線に配した方がより破壊力が増すだろう。実際、EUROを制したスペイン代表はトップ下を本職とするセスク・ファブレガスを「0トップ」として起用しており、本田にもセスクのような働きをしてもらうことで、新たな攻撃のバリエーションが増えるはずだ。

・実戦でもテストされたが・・・

8月15日に札幌ドームで行われたキリンカップのベネズエラ戦において、ザッケローニは後半途中から本田の「0トップ」を実戦で初披露した。この采配についてザッケローニは

「本田という選手が幾つかのポジションをこなせること、これはチームにとってとても幸運なことだと思っています。サッカーは一つの試合の中で、一つの大会の中で何が起きるか分からない競技です。そういう時に、ほかのメンバーとの兼ね合い、コンディションの問題等を総合的に判断して、いろいろな起用法を採れるのは監督としてありがたいことです。そう断った上で、今の時点で言えることは、われわれが目指すサッカーの中で、本田のポジションはトップ下が適正だということです」

(http://samuraiblue.jp/fanzone/ilmiogiappone/vol16.html)

とコメントしている。

今後もテストされる可能性はあるものの、やはりザッケローニの頭の中では本田はトップ下の選手であり、1トップのファーストチョイスではないことが明確となった。だが、南アフリカW杯では急遽1トップとして起用されながらも、きちんと結果を残すなど(グループリーグのカメルーン戦、デンマーク戦でゴールをマーク)、本田のFW適性はすでに示されている。

この先のザッケローニの采配を含めて、ザックジャパンのFW争いを楽しみにしたい。

2012/9/18 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 ロッシ
プロフィール 『鹿島アントラーズと水戸ホーリーホックを応援している大学生。ダビド・シルバ、ファン・ペルシー、香川真司など、足元が巧みな選手に目が無いです。野球は大のG党』
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