第18節を終え、ウインターブレイクに突入した今シーズンのセリエA。昨シーズンの王者ユヴェントスが安定した強さで首位に立ち、新監督を迎えたラツィオとフィオレンティーナ、長友所属のインテル、そしてナポリがユーヴェを追うスクデットレースとなっている。

例年ならこのレースに間違いなく参加するはずのミランは、ここまで8勝3分7敗で7位。やはり大幅にメンバーが入れ替わった影響は大きく、序盤のつまずきが順位に表れてしまっている形だ。

だが、苦しい前半戦を過ごしたミランの中で一際輝く超逸材がいる。その選手こそ、今回の主役であるステファン・エル・シャラウィだ。

・圧倒的な存在感でチームを牽引

ジェンナーロ・ガットゥーゾ、クラレンス・セードルフ、アレッサンドロ・ネスタといったこれまでミランを支えてきたベテランたちがチームを去り、さらに攻守の軸であったズラタン・イブラヒモヴィッチ、チアゴ・シウヴァがパリ・サンジェルマンに移籍するなど、シーズン開幕前のミランは大いに揺れた。そして、その影響はやはり甚大であり、マッシミリアーノ・アッレグリ監督はシーズンが始まってからというもの、基本フォーメーションの「4-3-1-2」に加え、「4-3-3」、「4-2-3-1」、更には3バックを試行するなど、新システムの構築に時間を費やさざるを得なかった。

その中で、開幕スタメンの座を勝ち取り、主にセカンドトップ、左ウイングで起用され続けたエル・シャラウィは、コンスタントにゴールをマーク。日替わりのシステム、メンバーで戦うミランを文字通り牽引したといって良いだろう。

全18試合に出場し、14ゴールという成績は、エディンソン・カバーニ(ナポリ、13ゴール)、ミロスラフ・クローゼ(ラツィオ、10ゴール)、アントニオ・ディ・ナターレ(ウディネーゼ、10ゴール)といった歴戦のゴールハンターたちを押しのけて得点ランキングで堂々のトップ。途中出場が多かった昨シーズンは22試合で2ゴールという成績だったが、前半戦でゴールを量産したこの20歳は一躍セリエA屈指のストライカーへと成長を遂げた。

・エル・シャラウィの魅力

エル・シャラウィの魅力はスピードとテクニックを高次元で兼備している点だ。スピードに乗ったドリブルと多彩なスキルこそがこの若武者の武器であり、そのプレースタイルはかつてミランに在籍し、絶対的エースとして君臨したカカ(現レアル・マドリー)をも想起させるものである。

エル・シャラウィは左サイドからのカットインを「十八番」としている。鋭い切り込みで相手DFを混乱させ、高精度のミドルを右足で叩き込む形こそ、彼の得意とするプレーだ。

加えて、ゴール前での落ち着きも見逃せない。まだ20歳の若武者だが、その落ち着きぶりは、ディ・ナターレのような百戦錬磨のベテランを彷彿とさせるものだ。また、結果を残している今シーズンはプレーに自信がみなぎっており、その堂々たるプレーぶりは対峙するDFに威圧感を与えている。

更に、この手のセカンドトップは往々にして守備をサボりがちであるが、若さあふれるエル・シャラウィは守備にも精力的に取り組んでいる。質の高いチャンスメイクとフィニッシュワークに加え、しっかりと守備のタスクを彼のようなタイプはあらゆる監督の下で重宝されるのではないだろうか。

おそらく、このまま順調に成長すれば、「セカンドトップの名産地」であるイタリアが輩出したロベルト・バッジョ、ジャンフランコ・ゾラ、ジュゼッペ・シニョーリ、アレッサンドロ・デル・ピエロ(シドニーFC)、フランチェスコ・トッティ(ローマ)、アントニオ・カッサーノ(インテル)といった歴代の名選手たちと肩を並べる存在になるはずだ。

これからのミラン、そして、EUROで準優勝に輝いたアズーリ(イタリア代表の愛称)でも未来を背負うエル・シャラウィを2013年もしっかりと追っていきたい。

2012/12/26 ロッシ

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。

 

筆者名 ロッシ
プロフィール エル・シャーラウィ、ネイマール、柴崎岳と同世代の大学生。鹿島アントラーズ、水戸ホーリーホック、ビジャレアルを応援しています。野球は大のG党。
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