バイエルンとCSKA、試合前から結果は容易に想像できるということから本田は現ヨーロッパ王者と互角にやりあえるのかということに注目が集まったCL開幕節。いつもはバイエルン中心に見る筆者も日本人である以上、本田の戦いぶりに注目せざるをえなかった。
しかし残念と言うべきかこの日のバイエルンは強かった。というよりCSKAとバイエルンの間には認識していたよりも大きな差があったと再確認させられた。前半のCSKAは中盤より前で繋ぐことはままならなかった。そこにはバイエルンの素早い寄せがあり、いわゆるインテンシティとやらの権化であった。本田のチームと評されるCSKAは本田にボールが入っても、孤立させられラームらの巧みな守備に封殺される。こうなってしまうとCSKAはバイエルンの土俵にずるずると引きずりこまれるのみで、案の定と言うべきか前半でセットプレーながら2失点を喫した。
このままなすすべなくCSKAと本田は敗れ去るのか、いや決してそんなことはなかった。後半本田はプレーエリアを少し下げ、組み立ての起点を担うことになった。ザゴエフがいないこの試合ではチーム随一のテクニックを誇る本田が中盤の回しに参加することによって、いくらかバイエルンのプレッシングに耐えることができるようになったのだ。しかしそこである弊害が生じる。本田がフィニッシュに顔を出せなくなることだ。元々フィニッシュに定評があり、トップ下で使われている本田だがボランチほどまで下がってしまうと、最終局面に再び参加するには本田が2人いないと無理な話である。ましてやペップバイエルンの弱点は周知の通りカウンターである。バイエルンはペップ就任からアンカー(ピボーテ)を起用しているので、前に素早く人数をかけるとたちまち脆さを露呈するという側面を持っている。しかし縦に速いサッカーを展開すれば、ますます危険な場面に本田は出てこれなくなる。そこでチームと本田にとっては二者択一であった。本田を起点とした精度が高く人数をかけられるカウンターを仕掛けるか、本田の決定力やラストパスの能力を信じ、ムサと二人で攻めさせるか。恐らく本田は後者をとった。
ボランチの組み立てでプレーしているときのプレーエリアが一番低く、前半でラームに封殺されたエリアはそこより少し前、後半終盤それらよりさらに前のエリアに本田は陣取り始めた。0対3と勝ち目の薄くなった試合、もしかしたら本田はヨーロッパ王者に一矢報いる一発というインパクトをとったのかもしれない。
しかし結果的には本田が期待したほどのインパクトを世間に与えることはできなかった。たしかにバイタルエリアで持つというここまで達成できなかった目的はなされたが、最終局面で守備陣の身体を張った守りについに本田のシュートはノイアーの守るゴールマウスに届くことはなかった。それはプレースピードの問題でまだまだ改善可能なものだろう。
そしてこの試合を見ていた日本人はこう思ったはずだ。
「本田はトップクラスの試合でも通用する」
まさにその通りであり、この試合に関して言えば孤軍奮闘であり、確かな存在感をヨーロッパに示した。しかし試合後本田はこうコメントしている。「僕自身やムサ、ほかの攻撃的な選手が得点を挙げなければいけなかったです。難しいときもあるけど、それが僕らの仕事ですから。残念ながら、今回は決められませんでした」(goal.comより引用)
ストイックな本田らしいコメントである。今日の試合で確信した。本田がビッグクラブに手痛い一発を見舞う日はきっとくる。この日の悔しさと痛みを忘れずに倍返しである…。
【外部リンク】本田:「僕らが得点を挙げなければならなかった」(goal.com)
筆者名:平松 凌
プロフィール:トッテナム、アーセナル、ユヴェントス、バレンシア、名古屋グランパスなど、好みのチームは数あるが、愛するチームはバイエルン。
ツイッター: @bayernista25