本田圭佑の加入するミランの現状は？

日本代表MF、本田圭佑の1月からのミラン移籍が公表された。夏のマーケットで移籍することができなかったのは非常に残念だったが、日本代表のエースがイタリアの名門クラブでプレーする事に心を踊らせているファンは非常に多いだろう。

ミランは日本でも人気のあるクラブだが、近年は財政難と報じられ続けており、かつてのような派手な補強に打って出る事はほとんどない。夏のマーケットでの目立った補強はレアル・マドリーからカカを取り戻した程度であり、補強しなかったツケが現在のリーグ戦の順位に反映されている。

ミランが夏のマーケットで狙っていたのはCSKAモスクワの本田とフィオレンティーナのセルビア代表MFのアデム・リャイッチだった。共に残りの契約が短くなっていた事から、ミランは「割引価格」で獲得できると計算していたが、前者はCSKAモスクワのプライドによって跳ね返され、後者は野心を露わにしたローマに奪われた。リャイッチについてはリッカルド・モントリーヴォを獲得した経緯を踏まえれば厳しかったが、CSKAとの交渉については、百戦錬磨の副会長、アドリアーノ・ガッリアーニも大きく振り回されてしまった。

前述の通り、ミランは最終的にはカカを手に入れて補強を期待していたサポーターの不満を何とか抑える事に成功したが、リーグ戦での結果は手に入らなかった。リーグ戦15試合を終えて勝ち点18の同率9位。首位とは勝ち点22差、来季のチャンピオンズリーグ出場権の得られる3位（プレーオフ出場権）までは勝ち点14差である。

「スクデット（＝優勝）を狙う」と言えば笑われてもおかしくない差がついており、ミラニスタからは叱責を受けるとは思うが優勝の可能性は無いに等しい。チャンピオンズリーグ圏内は届かなくもない数字だが、今季のセリエAは、チャンピオンズリーグ出場権を目指せる実力をもったクラブが多く、順位表で浮上するには非常に苦労する状況にある。

ミランは昨季も今季同様にシーズンの序盤でつまずいた。チャンピオンズリーグとの「二足のわらじ」が効いたというよりも、「戦術」と言っても過言ではないズラタン・イブラヒモヴィッチと守備の安定を一手に引き受けたチアゴ・シウヴァをPSGに売却したことの方が大きかった。攻守の軸を失ったチームは不安定さを露呈し、格下相手に取りこぼしを連発。「ミランは終わった」とメディアで報じられ続けた。

しかし、昨季のミランは息を吹き返した。彼らが息を吹き返したのは理由の1つは、マッシミリアーノ・アッレグリ監督が4-3-1-2を捨てて4-3-3へシフトした事だった。このシステム変更によってステファン・エル・シャラウィがブレイク。ミランの窮地を救うゴールを連発し、チームの浮上に大きく貢献した。

もう1つの理由は対戦スケジュールにあった。序盤戦は苦しんだミランであったが、その後は戦力的に劣る格下チームとの対戦が続いたのだ。この格下との対戦できっちり勝ち点3を確保し、年内に順位を大きく上げる事に成功している。1月にはマンチェスター・シティからマリオ・バロテッリが加入。チームの起爆剤となる事に成功し、チャンピオンズリーグ出場権の得られる3位でのフィニッシュを達成している。

そして今季もミランは開幕から失敗した。開幕戦で昇格組のヴェローナに敗北を喫すると、2節のカリアリ戦では勝利したが、3節のトリノ戦で引き分けに終わる。3連勝スタートでもおかしくなかった対戦スケジュールだが、苦しい形で強豪のナポリと対戦することとなり、1-2でホームの試合を落としている。その後もユヴェントス、パルマ、フィオレンティーナに敗戦。チャンピオンズリーグ出場権を争うクラブにはことごとく敗戦を喫し、同時に戦力の劣るクラブからも取りこぼし続けているのである。

うまくいかないチームは負のサイクルに突入するのが常であり、ミランの場合は「今のミランなら勝てる」と相手チームから思われている雰囲気がある。そしてチームもうまくいっていないため、格下チームの勢いを受け止めるだけの余裕がない。象徴的だったのはパルマ戦ではないだろうか。2点先行された中、アレッサンドロ・マトリ、マティアス・シルベストレの連続ゴールでチームは追いつき勢いづいた。しかし、押せ押せの中、勝ち越しゴールを奪えず。最終的には引き分け濃厚の90分にマルコ・パローロにスーパーミドルを沈められてしまった。

現在、アッレグリ監督はいつ解任されてもおかしくない状況であり、補強に失敗したとガッリアーニに責任を求める声も根強い。今節は好調のローマ戦。年内最終試合はインテルとのミラノ・デルビー。この2試合の結果でミランの今季が全て決まってしまうと言っても過言ではない。本田が加入する前の終戦を防ぐためにも最低でも1勝1分で乗り切りたい所だが、ミッドウィークでチャンピオンズリーグを戦ったチームがどこまで回復しているかが鍵となるのではないだろうか。